第一章 「『常盤色のオリサ』と黒龍」

「『常盤色のオリサ』と黒龍」part1

筆者前書き

 本作品は縦書きで表示すると多少読みやすくなるかと思います。画面右上にある「ぁあ」というボタンを押して、ビュワー設定の「縦読み」を選んでからお読みください。併せて背景色も「生成り」が比較的目が疲れにくいかと思います。もちろん、横書きや背景色の白がお好みの場合は、どうぞそのままご利用ください。


 お読みいただく方に操作をお願いし恐縮ですが「逆異世界転移物語」をお楽しみくださいませ。


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前書き


地球の人口が4人(人間1、魔法使い1、エルフ1、ドワーフ1)になった。

フリーダム。



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 いつまでもコンビニの駐車場でぼんやりしていても仕方がない。とりあえず俺の家に移動することにした。道中なにか話して打ち解けたかったのだが、後ろを歩く三人で話が盛り上がっていてうまく参加できないのが辛いこと辛いこと。


「先程の建物は神様の居城ではなかったのですね」

「そうだよー。神様が住むにしても小ぢんまりしてたし」

「小さかったが、なかなかいろいろなものが置いてあったな。この世界の商店は物が豊富だ。つまり、この世界には優れた輸送手段があるのだろう。それに、それらの生産力もわたしの世界を上回っている」

「ルルちゃんよく考えてるねぇ。ところで、このあたりはたぶん田舎だよね。もっと都会も見てみたいなぁ。あ、でもリーフちゃんはここらへんの方が落ち着くかな」

「確かに森林がある方が落ち着きますが、せっかく元いた世界とは別の世界に来たのですから、いろいろ見て回るのも楽しそうですね」


 『女三人寄ればかしましい』と言うが、そのとおりだ。話は尽きることなく、俺が会話に参加する余地もないまま家に着いてしまった。お茶でも飲みながら、今後のことを考えよう。


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「どうぞ。あ、ここで履いてるものを脱いでね」


 日本の家は土足禁止、という認識はないだろうな。


「ねえねえ、履いてるものっていうのは、これのこと?」


 そういって魔法使いがホットパンツに手をかける。


「そ、そうなのですか?」


 次いで驚きの声を上げるエルフ。


「え、え!?いや、そうじゃなくて」


 予想外の質問に慌ててしまう。土足禁止以前の話で、異世界ともなるとそんな強烈な文化の違いがあるのか?


「お前たちのブーツのことだろうよ。オリサはしょうもない冗談を言うな。リーフは素直に騙されるな」

「わかってるよ、ルルちゃーん」

「冗談だったのですね」


 ドワーフがたしなめると、底抜けに明るい魔法使い少女がケラケラ笑いながらブーツに手を伸ばした。出会って間もないのにからかわれてしまった。というか、俺以外の三人はすでに名前も覚えて随分打ち解けている様子だ。


「とりあえずそこの椅子に座ってて。お茶でもれるよ」

「はーい。お腹すいたから、さっきのお店でもらってきたもの食べてるね~」

「あの、お邪魔でなければわたくしも何かお手伝いいたします」


 リビングのソファーを指して客人に休息を促したところ、長身のエルフが率先して側に寄って申し出た。魔法少女とえらい違いだな。

 170センチの俺をゆうゆう超える位置に目がある。こんなに長身の女性に会ったのは初めてだ。そして背が高いのに顔小さ!左だけ顕になってるキリッとした目がめちゃくちゃ綺麗!エルフというのは皆こんなに長身なのだろうか。やばい、近くに立つだけで緊張する。


「えっと、リーフさんでしたよね。たいしたことないですから、ど、どうぞ座ってゆっくり休んでてください」

「承知しました。ありがとうございます。それと、どうぞ『リーフ』とお呼びになり、楽にお話しください。この話し方のせいで相手を萎縮いしゅくさせてしまうこともありまして」

「ああ、そうなんだ。わかったよ」


 一礼してリビングに歩いていくリーフを見届けてキッチンに向かった。


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 うちは地元では別段大きいわけではないが、それなりの部屋数がある。もともと祖父母の代まで農家をやっていたので家の敷地はそこそこ広い。俺が子供の頃は建物もかなり古くトイレもくみ取り式で、テレビで古民家として出てくるような『いかにも』という家だった。もう農家でもないのだから新しくしよう、と建て替えたのが確か十年前だったか。母と妹は今の機能的な家を大層気に入っているようだったが、今となってはそれも関係ないことなのか。

 お湯が沸いたので、やかんから茶葉の入った急須にお湯を移す。湯気とともに、ほんのりと緑茶の香りが漂ってきた。

 それにしても、俺が寝ている間に皆別の世界へ行ってしまったのか。今更ながら寂しくなってきた。妹、友人たち、先生方……。皆どのような世界にいるのだろう。確認したわけではないが、神様の話しぶりだと戻ってくることはない、一方通行なのだろう。まさか、こんなことになるなんて……。

 いや、今は現実を見つめて頑張るしかない。余計なことを考える暇はなさそうだ。正直、いまでもわけがわからない。そうとしか表現できない。だけど現実に、俺の心を読む老人が現れて三人の異世界人が雷と共に目の前に現れた。超常的なことが積み重なり、もはや世界に地球人が俺一人ということを否定することは難しそうだ。否定したい、これは夢だと思いたい気持ちもまだわずかにあるが。

 とにかく、まずは俺を助けてくれるという仲間たちのことを知らなければ。無理してでも明るくいこう。

 とりあえず名前を間違えないように気をつけて。金髪エルフの『リーフ』、ちっちゃいドワーフの『ルル』、元気でさっき俺をからかった彼女は……、なんだっけ?なんとか色の『サオリ』さん?微妙に違う。これじゃ日本人だ。先が思いやられるな、俺。

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