「最後の一人の地球人」part6

前書き


主人公の透はコンビニで神を名乗るやばい老人と出会った。



・・・・・・・・・・・・・・・・



「はー、本能寺の変ってそういう経緯だったんですか。どの歴史書にも載ってないですよね」

「左様、一通り見ておったよ。わしにはつい最近のことだし記憶も鮮明だ。どうだ、神様というの信じる気になったか」

「そもそも心を読んだり、誰も知らないことを知ってる様子からして信じるしかないです」

「そうかそうか。まぁ、悪趣味だし流石にいつも心を読み続けているわけじゃないがな。よし、それなら信じたご褒美にケネディ暗殺犯のことも教えてやろう」

「本当ですか!って、そうじゃないですよ。ケネディも気になりますが」

「日本人のお前さんには三億円事件の犯人のほうが良かったか?」

「いいですね、気になります。あー、いや、そうじゃなくてですね。結局の所、俺はこれからどうしたら良いんですか?家族がいる異世界に送ってくれたりするんですか?」

「一人称が『僕』から『俺』になったな。素が出てきたか。『私』を使うべきと思いつつ、慣れないから結局『僕』を使う。なんとも若いな」

「俺をからかいに来たわけですね?」

「いや、すまんすまん。久々にこの世界の酒が飲めて嬉しくてな」


 それまでの酔っ払いの雰囲気から一転して真面目な表情で老人は語り始めた。


「質問の答えだが、君にはこの世界で生きてもらわねばならん。実はな、我ら神の世界にもルールがあるのだ」

「ほう」

 あ、このパンケーキ味とかいうアイス、たしかに美味い。

「詳しい理由なんかは省いて結論だけ言えば、その宇宙で最も活気のある星でそこを支配する知的生物、この場合は地球と、君たち人間だな。これがいなくなったとき、その宇宙は消えてしまうんじゃ」

「ははぁ」


 どうしよ、売り場からもう一個持ってこようかな。


「つまり最後の一人の地球人である君が死んだりいなくなると、この宇宙そのものがなくなるのだ」

「ほー」


 飲み物も減ってきたし、まとめて取ってこよう。


「更に厄介なことに、宇宙の消滅はわしの消滅も意味しておる」

「ちょっと売り場行ってきますね。すぐ戻ります」

「まてまて、このタイミングはおかしいじゃろう」


 こっちが真剣に困ってるときは浴びるように酒を飲んでいたのに。


「要するに、俺が死んだり万が一にも他の人みたいに異世界に行っちゃうと神様も死ぬと」

「つまりはそういうことだ」

「一人でこの先も生きていくのは無理でしょう。俺は生きていくのになんの技術もありませんよ。ああ、まあ、さっき話したしょうもない独学ピッキングくらいしか。神様消滅しちゃうくらいなら、俺をどこかテキトーな異世界に送ってからにしてくださいよ。できるだけ平和な所で。最後の力を振り絞って俺を助けてください」

「お主、案外残酷なこと言うな」

「まあ冗談はさておき」

「今の冗談で済むか?」

「マジなところ、神様としてはどうしたいんですか?俺一人で置いとかれても、いつまで生きられるかわかりませんよ。それに、子孫が残せなきゃ宇宙消滅は時間の問題だし」


 正直童貞だし。大学に入ったら生まれて初めて彼女とかできるかと思ったけど、もう無理なのか。さすがにへこむ。



『嗚呼淋し 地球に一人 清き身で』



「こらこらこら、辞世の句を読むんじゃない」

「心を読まないでください」

「そこでだな、こちらも異世界から人を呼ぶことにした。異世界の神々も流石に今回の件は驚いてな。人がいなくなりわしらが危機的状況に陥ったので、他の世界に住む様々な種族から三名、お前さんを助けるための人材を呼ぶことにしたのだ。異世界の神も手伝ってくれる。これでどうにかお家取り潰しは免れるだろう」


 なんか宇宙の危機なのにお家取り潰しとか聞こえたけど無視しよう。


「えーっと、要するに人が一人でもいれば神様は消えずに済むと」

「厳密に言えば大事なのはお前さんで、異世界から来る者たちはお主が困らないようにするためのサポートだな。兎にも角にも、お主の居住実績があれば何とかなる」


 なにやら先ほどからイマイチ宇宙規模の危機だと思えないワードが出てくるな。


「さて、それではさっそく異世界からの仲間を呼ぶか。ちょっと外に出たまえ」

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