でっかいって言ってもそんなでも…うわっマジでっか!!
貴音真
兄と妹の災難
「うわああああああ!!!」
風呂場から兄の叫び声が聞こえた。
どうやら奴が出たらしい。
ドタドタとうるさい足音が私のいるリビングに近付いてくる。
「お、おい!里美!助けてくれ!ゴキが!でっかいゴキが出たんだよ!」
「テメエ!チ○コぐらい隠せや!あとびちゃびちゃじゃんかよ!ふざけんな!」
兄は全裸のまま
その陰部がズル剥けで、私の彼氏のモノよりも3センチくらい大きいことに無性に腹が立った私は、ソファーから立ち上がると戸棚の上に置いてある冷却タイプの殺虫スプレーを手にして噴射した。
プシャーーー!!!
「いぎゃあああああ!!!」
まさかゴキブリが悲鳴を?…いや違う。これは兄の叫び声だ。
「ななな、里美はん!!あんたなにしてくれはるんですか!!ボクチンのチ○チンが凍ってはりますえ!!」
プシャーーーーー!!!!!
謎の京都弁(?)にムカついた私はさっきよりも長く噴射してやった。
兄は妹の私の前で全裸のまま股間をカチンコチンにさせて悶絶していた。いい気味だ。
童貞でロリコンの癖にズル剥けで私の彼氏のよりも大きな兄のチ○コなんて凍らせてしまえばいい。
一仕事終えた私は再びソファーに腰かけた。
その時だった。
ゴザゴザ…
いやこれはおかしい。
擬音がおかしい。
そう思いながら私はゆっくりとリビングの扉へと目を向けた。
ゴザゴザゴザゴザ…
「ひゃあああああああ!!!!!」
それを見た私は悲鳴を上げていた。
我ながらよくこんな大きな声が出ると感心したくなる程の大きな悲鳴だった。
それも仕方がない事だと思う。
なぜならそこにいたのは私の想像を越えた存在だった。
ゴザゴザという聞き慣れない擬音と共に現れたそれは、たった今私が撃退した兄のチ○コよりも8センチは大きく、私の彼氏のチ○コよりも11センチは大きなゴキブリだった。
因みに私の彼氏のチ○コは一般的な350ミリリットルのアルミ缶の縦の長さとほぼ変わらない。つまり12センチ程度だ。因みにこれは通常時で…いや、その話は今どうでもいい。
そこから換算すると兄のチ○コは…いや、兄のチ○コはもっとどうでもいい。
どうでもいい話はさておき、彼氏のチ○コと比べた場合、あそこにいるゴキブリの体長は少なくとも23センチオーバーとなる。
はあっ!?
23センチ!!?
でっっっっっか!!!
ふざけんなし!!!
本当にでっけえじゃんかよ!!!
ちょっとおっきめな5センチくらいの奴にビビり(兄)が騒いでいるのかと思いきやガチででっけえじゃねえか!!!
マジでふざけんな!!!
23センチのゴキブリとかもはや生物兵器だよ!!!
世界最大のヨロイモグラゴキブリの三倍くらいあんじゃねえか!!!
「おっ、おい!!バカ兄貴!!起きろ!!起きて戦え!!戦わないとあの生物兵器にチ○コ喰われるぞ!!兄貴!!」
だが、私がどれ程呼び掛けても兄貴は微動だにしなかった。どうやらチ○コが痛くて動けないらしい。
ゴザゴザゴザ…
「ひいいいいいいい!!!バカ!!!動くなし!!!い、いい、1ミリでもリビングに入ってきたら凍らせんぞ!!!」
私は右手に持った冷却タイプの殺虫スプレーを強く握りしめた。
その時だった。
私は右手に持ったスプレーの違和感に気がついた。
軽い…
明らかにさっきよりも軽かった。
そんな筈はない。信じたくない。まさかそんなことになる訳がない。
私は確かめるようにして右手に持ったスプレーを振った。
カスカスカス…
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………中身がない!!!!!!!
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!!!!
断然ヤバい!!!!!!!!
「いやいやいやいやいやいや、ない。それはない。うん少し確かめてみよう。あ、兄貴、悪いけどまたやるからね…中身が入ってるか試させてもらうよ……」
私は右手の人差し指に祈りを込めてトリガーを握った。
プシャー!カシュ、カシュ、カシュ…
それは一瞬の出来事だった。
強く握りしめたスプレーのトリガーは一瞬にして反発力をなくし、吹き出た冷気は一瞬だけ白い煙となってすぐに消えた。
「あははははは…あたし、死んだな……」
絶望…
圧倒的絶望!!!!!!!!
私は凡そ4メートル先にあるドアの向こうで触角を動かす化物ゴキブリと渡り合うための武器を失った。
それは、ウォータースライダーで上下の水着を同時に失った時の絶望感よりも深く、シャワー浴びている時の停電よりも暗い闇に包まれていた。
「…おいお前、頼むからそこから動くなよ…マジで頼むからゼッテーそのまま動くなよ…よし。…そーっと…そーっと……」
私は絶望に支配されていなかった。
武器を失った私に残された策は扉を閉めて奴の侵入経路塞ぐことだった。
私はカタツムリ…私はナメクジ…私はスッポン…そう言い聞かせながらゆっくりとドアへ近付いたその時だった。
私は思い出した。
スッポンは走るのが
もしもし亀よの亀がスッポンだったなら展開が違っていただろうなと思う程に
いや、それは今どうでもいい。
そう思った瞬間だった。
ゴザゴザゴザゴザ!
「ひいいいいいいいい!!!!!」
奴が動き出した!
ゴザゴザゴザゴザ!
「うわああああああ!!!」
ゴザゴザゴザゴザ!
「やめっ!!ちょっ!!ざけんなっ!!」
ゴザゴザゴザゴザゴザゴザゴザゴザ!
リビングの中を重力などガン無視で縦横無尽に這いずり回る23センチオーバーの巨大ゴキブリ…
その姿は
そう言えば、四つの力で重力が一番弱いのにライトノベル(?)とかアニメとかで重力を操る奴が強キャラなのは何故だろうか?
物理学では重力が最弱というのは基本どころか赤ちゃんでも知っている事なのに、それらの媒体での超能力的な奴では重力がやたらと強いのは何故だろうか?
重力が強キャラな作品は中学生レベルの知識しかない人向けなのだろうか?作者はどう考えているのだろうか?
いや、今はそれはどうでもいい。
「今だ!!!!!」
バタン!!!
私は隙を衝いてリビングから脱出した。
リビングには兄がいるがまあアレは放っておいていいと思う。
「兄貴、暫く我慢しなよ。私が今殺虫剤を買ってく…あっ……やっば…財布もスマホもテーブルの上に置きっぱだ……」
私がそれに気がついた時にはもう手遅れだった。
財布もない、スマートフォンもない、つまり何も買えないし助けも呼べない。
………………うん。
仕方ない。これは仕方ないよ。
私はそう心に言い聞かせる事で兄のことを諦めるようにと自分を説得し、自室に戻ってやり過ごすことに決めた。
その時だった。
ゴザゴザゴザゴザ…
ゴザゴザゴザゴザ…
ゴザゴザゴザゴザ…
ゴザゴザゴザゴザ…
真っ暗な廊下のあちこちから聞き覚えのある音が聞こえてきた…
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