後悔と不安

第1話

　ぼくらが生きているのは今だ。

　ぼくらが見ているのも今だ。　

　ぼくらが聞いているのも今だ。

　ぼくらは今を感じて生きているのだ。

　今を必死に生きればいい。今できることを精一杯やればいい。それだけの簡単なことがぼくらはできない。

　できなかった過去を振り返っては後悔をする。そうして動けなくなる。

　できなかった将来を想像しては不安になる。そうして焦りのあまり動けなくなる。

　いままさにぼくは動けていない。

　もっと本能のままに動く動物らしさをもっていれば動けるのに。そんな事を考える時点でぼくは過去にとらわれて後悔をし始めている。

　いまの行動が将来を悪くするんじゃないか。そんな事を考える時点でぼくは将来にとらわれて不安を感じ始めている。

　どうなりたいかを考える。そしてそこに至る道筋を考える。その道筋を歩いているぼくを考える。そうすれば自ずといまやるべきことは見つかるはずなのに。

　考えが堂々巡りをはじめて数時間。できない探しをしている自分に気づく。できることを探しているはずがいつの間にやらだ。きっと後悔と不安が希望に打ち克ったのだろう。

　儚い希望にすがるよりも現実に従うほうが万倍マシだと本能がさけんでいる。

　それこそいまを必死に生きろと叫んでいる。いまの不満な毎日をだ。

　不満のない毎日を掴みたいがために考え始めたのに何という体たらくだ。

　人間なんてこんなもの。そう諦めてしまいたい気持ちを御してこそ。そうは思うのだがなかなかできそうにない。絶対に負けられない戦いと位置づけてはや1ヶ月。結論は出そうにない。