第43話

 僕の庭はB区の云話事イーストヒルズにある。大型レーシング場だ。

 そこで、彼らのドライビングテクニックを磨いた。

 後、三週間しかないのだ。

 トラックとはサーキットコースのこと。コントロールラインは周回の基準となる線。ストレートは直線路の意味。コーナーは角という意味でカーブのこと。コーナーでアウトとは道幅の中の一番遠い場所。逆にインは道幅の中で一番近い場所。もしコースアウトしたら、戻るところをレコードラインという。ピットは車の整備や修理などを行うスペース。

 アンダーステアはハンドルを切った分より車が曲がらないこと。逆にオーバーステアは、ハンドルを切った分より車が曲がること。

 スピン。ドリフト。マニュアルの操作。などを教えて体得してもらった。僕と原田も腕を磨いた。この三週間は僕はみんなとやれて本当に楽しかった。


 ぼやけた蛍光灯が並列している会議室で、複数の人々がいる。

 長方形のテーブルに皆が座っている。

「そうですね。C区の技術が試せます。試験的にデータを送ってみますよ」

 複数いる茶色い作業服の男たちの年配のリーダーは、グレーの帽子を少しずらして、頭を掻いていた。

「出来るのなら、その方法でもいいな……」

 角竹は微笑んで興田 道助と顔を合わせた。

「ええ。といっても、全員殺しても構わないんでしょ」

 興田 道助がふざけた調子で軽口を言ったが、その顔にはどこか真剣なものが垣間見える。

「ふむ……。日本の将来がかかっているんだし、道助。解るな。あの娘はどうしても殺さなければならないんだ。或いは永久に失脚しなければ、日本が滅びる」


 興田 守は息子の顔を見つめ早口に言った。その顔からは穏やかさとは正反対の感情が滲み出ていた。まるで、強迫的な感情を無理矢理抑えている感じに似ている。

「楽しくゲームをする。それが、日本の将来に繋がる。三年前の野球以来だな。あの娘は面白い。だが、ゲームといっても何かを失ってもおかしくはない。どんなゲームにも言えることなのではないかな? それを理解しているのか……あの娘は?」

 角竹は長方形のテーブルとは少し離れた重厚なテーブルの椅子に腰かけた。

 カーテンのない嵌め殺し窓からは、ここC区の工場が建ち並んでいた。それぞれの席には関わりのあるC区の重役たちが集まっていた。

「後はアンドロイドのノウハウにレース用の高度プログラムをアップデートしてしまえばいいんですね。……それと……」

 秘書の満川は静かに言いだした。






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