第40話

 しかし、晴美さんの政策は金がかかりすぎる。

 金が相当にかかって、国の人間的将来性はあるのだが、国民はそうは思はないかも知れない。

「うーん。確かに今の選挙活動的にはどうかと思うわ。あの宣言では……?」

 九尾の狐がコーヒーに口をつけた。

「この選挙で勝たないと、意味はないね……」

 原田はお洒落な度なしレンズをハンカチで拭いていた。

「でも、奈々川首相の実力に頼るしかないわ」

 河守はニッコリと笑った。

「確かに……」

 僕たちに出来ることはここまでか……。


 次の日。

 云話事放送Bで記者会見の場で晴美さんが退陣していた。

「晴美さん……」

 僕は34階のキッチンで朝食を河守と取っている時に、テレビを不安げに観て呟いた。

 そして、国民は興田 道助も選んでいたのだ。

 選挙では選挙存続期間というのがある。選挙で勝ち続ければ首相になっていられる。任期は廃止されていた。

 記者会見の場で、晴美さんの姿が見えなかった。そして、興田 道助がこう宣言した。

「日本の将来性の勝利ですよ。今から新しい政治が行われる……私が首相になったのだから、日本は発展していきます」

 新聞記者が質問を浴びせた。

「前奈々川首相(晴美さん)は退陣しましたが、どうしたと思いますか?」

 興田 道助がふざけて軽口を言った。

「きっと、前奈々川首相はトイレにいって、時間が掛かったので出てこなかったのですね」

 興田首相のセクハラ発言に新聞記者たちから笑い声が聞こえた。


 僕は頭にきてテレビを消した。

「きっと、何か起きたわ!」

 河守が突発的に電話で首相官邸の夜鶴に掛けた。

 原田が上の階からエレベーターでやってきた。

「やっぱりここか。寝室に二人でいたら、どうしようかと思ったよ。テレビで奈々川首相がいなかったから、何か起きたと思ったんだ」

 原田は緊迫した顔をして、僕の真向いの席に落ち着いて座った。

 河守のコールで、夜鶴が出たようだ。

「え……。トイレから出てこなかった?」

 河守が辟易したが、次の言葉を夜鶴が言ったようで、すぐに緊迫した。

「毒?」

 僕は見誤った。

 毒のことを知っておきながら、警戒することをしなかった。

 敵は用意周到だったのだろう。

「食材に微量に混在していた……? それで、晴美さんは?」


 河守がすぐさま受話器越しに問うと、

「一命は取り留めた……よかった……」

 僕は山下が藤元に頼まれて、渡した手のひらサイズのプラスチックのことを思い出した。

「それで、今、病院?」

 僕はカレンダーを見ると、C区に頼んだアンジェたちの修理が終わった日が明日だった。

「雷蔵さん。病院へ行きましょう」

 河守が今まで見たことがない不安な表情をしている。

 とても、心配しているのだろう。

「いや、明日にしよう。敵が待っている……」

 僕は不敵に笑った。


 晴れ渡った日だった。白い雲一つない空を、黄色のランボルギーニで河守と九尾の狐と銀色のフェラーリに乗った原田を連れて、C区へ来た。大手の会社を見て、僕は国を左右するほどの戦争を仕掛けようと不敵に笑っていた。

 これで、僕たちは全員揃った。

 アンジェたちは大喜びの原田の銀色のフェラーリに乗った。

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