第33話 両想い
「そう……なんですね……よかった…………。それと……僕も人間になったようだ…………」
晴美さんはそこで、ニッコリと微笑んだ。
僕には、晴美さんの魅力的な笑顔の秘密がチャーミングなホクロにあることを知った。
11月の半ば頃。
日本という歯車が回り出した。
僕はその中心にいるのだろうか?
それとも、外側にいるのだろうか?
ここは、僕の家。
云話事帝都マンションの34階だ。
晴美さんの暗殺計画を阻止できるのか、解らないが、今から丁度一週間後がその日だった。
そこで、河守。九尾の狐。原田。夜鶴と晴美さんが集まっていた。後、犬。
「まずは、晴美さんの暗殺の阻止と、エレクトリック・ダンスの阻止ね」
九尾の狐はキッチンから砂糖を大量に入れたコーヒーを持ってきていた。夜鶴や河守は各々好きな飲み物をテーブルで飲んでいる。
犬はテーブルの下で、大きな肉にありつきながらマルカの足元で臭いを嗅いで、しきりに首を傾げていた。
「アンジェたちが居ない今。俺たちだけで何とかしないと……」
原田は買い換えたお洒落な度なしレンズのメガネを掛けて、紅茶を飲んでいた。少し震えが伝わる声色だ。何故ならアンジェたちの修理は容易ではないのだ。
「いくら私でも、暗殺の情報は盗めなかも知れないわね……結局、私たちハッカーは情報を盗めないと何もできない……頼りないわね……」
九尾の狐は俯くと溜息を吐いた。
「俺は晴美さんに取り敢えずは、くっ付いているよ」
夜鶴は緊張した表情を崩さなかった。
「問題……。 C区が何をしてくるか? 毒殺や銃撃や、それともロケットランチャーか!?」
河守が不安を払拭しそうな声を、オレンジジュースを持ちながら声を張り出した。
「うーん……。毒殺が無理なら銃撃……それも無理ならロケットランチャーでは?」
僕は考えた。
河守が僕の顔を覗いて、ニッと笑った。
僕は何故かドギマギした。
「そう、その通りよ。敵は十重二十重と狙ってくるわね。何故ならあちらも未来の日本のために動いているのよ」
河守は人差し指を僕たちの前に挙げ、
「みんなで協力しないと防げない!! アンジェたちがいればなおいいのに……。さすがにロケットランチャーはどうしようもないわ」
河守はニッと笑って続けた。
「でも、最悪。こっちには藤元さんがいるわ。例え全員死んでも生き返ることができる」
みんなの緊張が少しだけ綻んだ。
「確かに……そうだよ……そうそう」
一番緊張していた原田が気楽な口調になった。
「あ、でも。エレクトリック・ダンスはどうするんだ?」
原田の一言で、僕は日本の将来は晴美さんを守るだけでいいのだが、それだけではないことに気が付いた。
確かに、晴美さんを助けても、何かの策でエレクトリック・ダンスが発足すれば、僕たちの負けだ。
そういえば、向こうには白いスーツで20代くらいの政治家の男がいたのだ。敵が選挙戦を挙げるとまずいかもしれない。
「そうですね……」
晴美さんが珍しく歯切れの悪い言い方をした。
けれど、すぐに僕の方に首を向けた。
「あ、テレビ点けてください。多分、云話事町TVの時間です」
晴美さんが腕時計を見て、キッチンのパノラマテレビを僕に点けさした。
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