第23話
「雷蔵様~~。大丈夫ですか~~」
ヨハの声が聞こえる。
僕は夢から覚めた。
辺りを見回すと、ヨハ以外に誰もいない真っ白い病室だった。外は豪雨と強風が激しく窓を叩いていた。
「酷かったんですよ~~。4日間もお眠りしていて~~左足と左腕と右足~~。そして~、お腹に計6発も撃たれてあったので~~すよ」
「僕は起きているのかな?」
僕はまだ夢を見ているのだろうか?
ヨハに確認すると、ヨハは首を傾げて、
「はい、雷蔵様は起きていますよ~~」
「みんなは?」
すると、ヨハの可愛らしい顔が曇った。
「酷かったです~。みんな死んでしまいました~。ノウハウは~全てアンジェとマルカが破壊しましたが~~、被害が大きかったので~……」
「え?……藤元は?」
ヨハが俯いた。
「藤元様は今現在~行方不明です~~……」
僕の頭に再び真っ赤に燃える金属棒が突き刺さる。
「ヨハ! アンジェとマルカを呼んでくれ!! C区と戦争だーー!!」
僕はなりふり構わずに叫んでしまっていた。
この感情は一体何なのかと、僕は考えることもしなかった。
「了解しました!!」
白の壁にあるテレビでは云話事町TVがやっていた。
「おはようッス!! 云・話・事・町TV―――!!」
美人のアナウンサーの背景にはボロボロになったA区の青緑荘と周辺が見える。所々煙が立ち上り、ブルーシートが至る所に被さっている。
周囲の人たちは誰もいなかった。
「今日は悲惨な事件をお知らせします! なんと、A区の左辺部青緑荘で死者80名です!!」
美人のアナウンサーはピンクのマイクを力強く握る。
「警察の調べで解ったことは、全部のノウハウの頭のプロフィールデータが壊れていることだけッス!! 製造元も解らなくて証拠も無いようです!! まるで35年前の戦争のようです!!」
美人のアナウンサーが吠えた。
更に吠え。
「それに、藤元が何故か行方不明!! 藤元!! さっさと戻って来て、みんなを生き返らせろー! 鼻毛――!! マイクで刺すぞー!! 働けー! 高いギャラ払ってんだぞー(嘘)!! 女子更衣室覗いたことみんなに言いふらすぞー!!(本当)」
美人のアナウンサーは気を落ち着かせると、
「そういえば、生放送でしたね………皆さんは聞かなかったことにしてください……」
美人のアナウンサーが落ち着いて話し出した。
「やったのは、C区のはずです。うちの藤元がいなくなる直前に言ってたので……」
美人のアナウンサーはピンクのマイクを握ると、一つ咳払いをした。
「……コホン。それと、これもいなくなる直前の藤元が言ってたんですが……。というかゲロさせたんですが……。あの日本屈指の大金持ちの矢多辺 雷蔵さんが日本史上最も高性能と言われる軍事用アンドロイド三体とC区と交戦中だったようです。私は憤ります……重大なことを今まで話してくれない藤元にマイクを突き刺したいです……」
藤元がいないので、マイクを刺すようにシャドウをしている美人のアナウンサーは一人で話している。背景には無残になった青緑荘が写っていた。
「矢多辺 雷蔵氏は昔はハイブラウシティ・Bで、日本を窮地に陥れようとした人物ですが、今となっては日本の救世主になるかも知れません。そう藤元が言っていました。何が起きているのかは解りませんが。番組はその雷蔵様を(私だけ)応援しているッス」
美人のアナウンサーはマイク片手にペコリと頭を下げると、
「きっと、日本のために戦ってくれるはずです……」
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