第19話「いきなりステータスオープン(後篇)」
まず前提として。
武器術アビリティは異なる武器のものでも基本共有されるものらしい。
フィルナの場合、剣と槍がベテランクラスなので、どのアビリティも剣と槍で等しく使う事ができるようだ。
戦闘アビリティというのはまぁ、技とか奥義を表すらしい。
どのくらいその技を身に修めているかをランクで現し、やはりスキルとして一度習得すると、意識せずともそのランクに相応しい技量までは体が自然と動くようになるのだとか。
ではそのアビリティについて一つづつ説明していこう。
これは、狙いすまして強力な一撃を叩き込む戦術を身に着けていることを表すアビリティ。
隙を見つけて最高の一撃を繰り出す鍛錬をひたすら行い習得したという。
流れるような連撃を行う
無数の型稽古を行い、実戦訓練を得て、ひたすら実用レベルになるまで鍛錬を行ったそうだ。
武器を扱う体の使い方を極め、一撃の威力を高める技を身に着けていることを表すアビリティ。
最高の一撃を放つには姿勢、フォームが大事。わずかな乱れも無く最適な一撃を常に放てるよう厳しい鍛錬を行って習得したという。
対多数戦用の型と実践的稽古により乱戦に対する無数の技を身に着けていることを表すアビリティ。
実戦は一対一とは限らない。むしろ基本的には乱戦だ。複数人での対決を視野に入れた訓練をたくさんしたらしい。
移動とともに即攻撃を行い、移動の勢いを威力に上乗せする技やそれを有効活用する無数の戦術を身に着けていることを表すアビリティ。
最初はひたすら的に向かって突撃する訓練から始まり、やがてはそれを実戦でいかに使うか、そのための技を身につける鍛錬を行ったという。
長い鍛錬により白兵攻撃を受け流す効率的な体の使い方や技術を身に着けていることを表すアビリティ。
フィルナは正直、スピードに関しては遅い方だ。少なくとも戦士としては。
努力して並みレベルにはなっているものの、戦場ではもっと早い奴の方が多いそうだからね。
じゃあそんな不得意な敏捷に依存する回避について。それをどう補うかというと、その答がこれだ。
回避が不得意であるなら、武器技術依存の別の技を身につければいい。フィルナはそうやって四天王の地位まで登りつめたのだという。
もっとも、やっぱり四天王最弱だったらしいんだけどね。
前四天王が出産して引退した席にすっぽりタイミングよく収まっただけなのだという。
まぁそれでも彼女の実力が高いのは間違いない。
特にこの
敏捷Sランクの俺の剣さえもわりと回避できたりするからな。
あぁ、フィルナが生理終わってから一度だけ木剣で軽い稽古をしてみたんだよね。
まぁ、当然俺が圧勝した訳だけど。
ずるいずるいって拗ねてるフィルナはとても可愛かった。
白兵攻撃を切り払ったり受け止めるなど武器で防御する効率的な体の使い方や技術を身に着けていることを表すアビリティ。
これもドワーフであるフィルナにとっては重要な回避手段だ。
彼女に攻撃を当てるのはけっこう難しいんじゃないかな。
盾の扱いを鍛錬し身に着けていることを表すアビリティ。
これも敏捷依存ではなく技術ランク依存の回避行動であるため、フィルナとは相性がいい。
技術ランク依存は器用さのボーナスが乗るのか、彼女の盾さばきはわりとあなどれない。
盾を用いた体当たりなど、盾による無数の攻撃手段を鍛錬して身に着けていることを表すアビリティ。
フィルナはBランクなのであまり得意としてはいないようだが、あの小柄な体格で距離を詰められると、一瞬姿が消えたような錯覚に襲われる。これはなかなかに手ごわい。ましてやその勢いで体当たりなんかされて体勢でも崩されようものなら実戦では致命的である。
厳しい実戦訓練により戦闘中の不利な状況に慣れていることを表すアビリティ。
これはわりと重要なスキルであるらしく、持ってるか持ってないかで生死を別けることも多いという。
なぜなら、ぶっちゃけこれは痛み耐性に近いからだ。
俺は痛覚無効だからいいけど普通の人間はそうじゃない。
痛みを味わえば動きは鈍るし集中力は霧散する。そういった時にどうリカバーするか、そもそも痛み程度でうろたえないようにするにはどうすればいいか。
そう、ひたすら鍛錬である。
素人がカーフキックを喰らったら一発で動けなくなるのに対し、格闘家は数発もらっても痛みに耐えて動けるのはなぜか。
何度も痛みを味わって耐えて、慣れているからだ。
それと同じで、あらゆる不利な状況やイレギュラーを味わい、その耐性を得たことを表すのがこのアビリティなのだ。
また、不意打ちに対する耐性や、いざことを構える際にいかに早く最適な行動を取るか、といった慣れも含まれているらしい。
闘気術。魔力を武器に纏わせて岩さえも切り裂く力を武器に付与するアビリティ。
レアスキル
習得する前提条件として
魔力使用量が少ない分、体力の消費も低く、長期戦で何度も使う場合はこっちの方が効率いいかもしれない。
闘気術。武器から魔力を放出し遠距離を攻撃するアビリティ。
レアスキル
習得する前提条件として
ワイバーンをやった時に使ったのは
消耗が少ないのでわりと乱発が可能そう。
続いてアーツについて。
アーツとは特定の流派に受け継がれている特殊なアビリティのことだ。
まずはアーバック流重装騎兵術。
この流派に伝わっているのは、重たい鎧を着込んだ戦士が有利に戦うために編み出された秘伝の奥義だという。
攻撃を受ける際に防御の硬い最も信頼できる部位や比較的ダメージが最小限に抑えられる部分で攻撃を受ける技術を無意識レベルで行えるよう修練を重ね身に着けていることを表すアビリティ。
無意識に致命傷を避けるスキルって感じかな。
腹に一撃喰らうくらいなら腕を犠牲に、とか男らしい戦い方をする奥義だ。
フィルナはこれを使って肩の分厚い装甲とかで攻撃を弾いてくるのでわりと戦いづらい。
上位ランクの魔物と戦う場合、攻撃を喰らうこと自体がわりと致命的なのであまり有用なスキルではない。
だがあるとないとでは生存確率が雲泥の差になる。そんなスキルだ。ドワーフのフィルナとも相性がいい。
どれだけ攻撃を受けても耐えられるよう何度も重い打撃を受けて練磨した究極の立ち方や姿勢と、衝撃を最適に受け流すリラックスした自然体と呼吸法により苦痛やダメージを軽減する術を身に着けていることを表すアビリティ。
なんだろうなこれ。空手とシステマが混ざったような感じ?
漫画の古流空手とかで見る全身を攻撃されるのを受け続ける修行と、リラックスしてダメージを分散させ呼吸法で痛みを散らすシステマの動き。これを両方合わせたみたいなイメージの技だ。
これもいざ攻撃を受けてしまった時の緊急回避技みたいなものだから、いざという時の保険みたいなものかな。
闘気術。全身を魔力でコーティングして全身を強固にする。
習得前提は
某漫画で例えるなら、念で肉体を強化する纏の防御限定版みたいな感じ。
続いてルイスラン流武神剣闘術。
攻撃を受け流すことに特化した奥義を伝えている流派。
受け流しの技術を最大限高め、水が流れるが如く力の対決を生まずにスルリと攻撃を受け流すアーツ。
まるで水中の月を斬るが如く対象は歯ごたえを感じないという。
なお、このアーツは白兵攻撃だけでなく矢などの飛び道具も受け流すことが可能となり初めて身に着けたと言えるようになるという。力の差があって受け流しきれない時などは、このアーツがあるとスルリといけてしまうらしい。
前提は
っていうか、飛び道具を受け流すって凄い。
受け流しと同時に無駄の無い動きで即座にカウンターを叩き込む技を身に着けていることを表すアーツ。
前提は
もちろん白兵戦ならそのまま斬りつける。
攻撃後の隙を狙えるわりと強スキル。
無意識レベルで行えるが、もちろんそれで逆に隙を作ってはたまらない。意図的に発動させないことも当然可能だ。
闘気術。瞬間的に武器に魔力を纏い、流れる水でさえ跳ね除け受け流すことが可能となる秘伝のアーツ。
これにより、炎のブレスや魔法など非物質攻撃さえも武器で受け流すことが可能となる。
前提は
魔法に対するパリィである。
うん、フィルナ硬ぇ……。
生存性能に特化したビルドといえる。
まぁ実際ゲームじゃないんだし、死んだら終わりなんだからその辺大事だよね。
さすがは俺の嫁。
お次はゼイダルム流騎兵闘法。
いろいろと雑多な奥義を伝承している流派らしい。
ちなみにランク+効果が二個重なると1ランク上昇になる。
ゲームっぽく能力値で表現されているとはいえ、実際1ランクの差ってどんなもんかっていうと、例えるならボクシングで階級が違うくらいの差があると思えばわかりやすいかもしれない。
筋力で例えるなら+ランクで1から2階級差が開くみたいな? 1ランク上ならその倍的な。
まぁ俺もよくわからんのだけどね。フィルナとの模擬戦で見た感じはそんなイメージだった。
最後にローレリエ流守護騎兵戦術。
これは対象を護衛する時に役立つ技を多数残している流派らしい。
まぁ、そういった鍛錬を沢山行ったんだろうね。ルティエラを助けられたのも案外このアーツのおかげだったりするのかもしれない。
あの時、ルティエラを抱えて回避できたのはこのアーツのおかげなのかもな。
で、後は格闘のスキルか。
素手で戦う体の使い方を極め、徒手空拳の威力を高める技を身に着けている。
拳だけでなく蹴りも頭突きも肘も膝も含まれる。
が、目潰しや金的、貫手みたいな特殊な技は別スキル扱いらしい。
オーソドックスな格闘戦術って感じかな。
無数の投げ技を実戦で使えるまでに昇華していることを表すスキルだ。
足払い的なのもあるから、鍔迫り合いになった時なんか重宝する。
もっとも、対人技だな。魔物は当然投げられない。
Aランクになれば投げられるようになるのかもしれないが。
で、レアスキルの
組み合わせると石造りの壁を豆腐みたいに切り裂いて遠くの距離まで攻撃が可能。
という感じのスキル説明を行った。
主にルティエラとセルフィに。
「凄いですね……生存性能に特化されたのですね」
「うん、ぶっちゃけ死んじゃったら意味無いからね。生き残るのを最優先に考えたんだよ」
えへんと無い胸を張って背を反らすフィルナ。
「フィオナちゃんとの愛の結晶?」
「ボク、そっちの趣味は無いからね」
自身に組み込まれた新たなスキルに感動しているセルフィ。
そして意味深なセルフィの発言にツッコミを入れるフィルナ。
なんだかんだで相性は良さそう……なのかな?
「はぁ……ボクの努力の結晶をポンポンと……」
性交渉一回で奪われればそりゃあ不服だよな。
「私の努力の結晶も受け継がれてるから、おあいこ」
セルフィも努力したんだもんな。ごめんよ楽しちまって。
「まぁ、一番得してるのはアルクだもんね」
じっとりとした目で見つめてくるフィルナさん。
はは、ごめんよ。
「でもアルクのおかげで私の生存能力が大幅にアップした」
「そうだな。どのくらいいけそうかちょっと後で稽古するか」
「おぉ……くんずほぐれつ、愛のぶつかり稽古?」
キラキラした目でこちらを見つめてくるセルフィ。
「それは夜にな」
「わーい」
嬉しいのかじゃれついてくるので頭を撫でておいた。
「ボクも~」
フィルナも頭を突き出してくるので撫でておく。
「みなさん本当、仲がよろしいのですね」
そんな俺達をうらやましそうな目で見つめるルティエラ。
そんなこんなで、お互いの現状スキルを見せ合った後、今後の戦闘スタイルや戦略を立てる。
様々なイレギュラー時の対策や基本的な立ち回りなど、細かい部分まで詰めていった。
セルフィはさすが元四天王だけあってそういったのをしきるのは上手かった。
さすがは俺の嫁。
こうして、俺達はパーティを組んで初の作戦会議を終えるのだった。
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オマケ
クラス
なれるクラスは努力によって習得したスキルにより変わる
話術や礼儀作法を習得すれば商人や貴族に
魔法を習得すれば魔術師に、武器術を習得すれば騎士に、といった具合
条件さえそろえばなりたい時にステータスプレート上で変更が可能
逆に言えば必要なスキルが無いと遊び人か無職にしかなれない
そしてスキルポイントで得られるスキルはそのスキルを習得するに見合ったクラスでないとできない
ランクを上昇させる場合もそのスキルを習得できるクラスになる必要がある
また、クラスに見合ったスキルであるとほんの少しだけ技量に修正が入ったりする
クラスとして得意なスキルはわずかにだけ上手に扱えるようになるのだ
アビリティやスキルの習得に必要なポイント
Cランク1点
基本的に一か月の努力を要する
Bランク5点
習得に約半年かかる
Aランク10点
習得に約1年かかる
Sランク30点
習得に3年はかかる
上級アビリティは1ランク上のものを基準とする
上級Sランク50点
習得に5年以上はかかる
EXスキルなど特殊なものは10点や30点、50点など様々
魔法は
Cランクで10点:一年は勉強が必要
Bランクで30点:普通なら三年かかる
Aランクで50点:最低でも五年はかかる
Sランクで100点:最低十年かかる
レアスキルは100点
習得に最低でも10年はかかる
前提で特定のアビリティAランク以上など条件があるものも多い
努力によるスキルポイントは、それのみにどっぷりと浸かる勢いで努力した場合の計算であるため
普通は他に並列して学ぶのでもっと時間がかかる
剣術などのスキルには特殊なルールがあり、ランクを上げるためには武器術アビリティをいくつか習得する必要がある
そして、さらにランクを上げるには習得アビリティのランクもいくつか現状の上限まで上げなければならない
武器術アビリティのランク上限は、それに対応する武器術の現在ランク
異なる武器を使う際に別武器のランクが下回っている場合、そのアビリティは武器ランクまでの技量しか発揮できない
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