科学者が異世界転生で元素使いになりました
理夢
第1話
柊理沙は小さい頃から疑問に思ったことをすぐに調べたり、検証してみたりと科学が大好きな女性だった。
真っ直ぐな性格で恋愛や遊びには全く興味を示さず、小中学生の時は、一人で本を読んでいるか、理科の先生に疑問を質問したりおしゃべりをするのがほとんどだった。
「理科だけ勉強しても社会ではやっていけないよ」
「そこまで調べて何になるの?」
「どれだけ調べまくるんだよ。キモいぞ」
いつ頃からだったか、小さい時は知識があると、よく褒められていたのに高校生ぐらいの年齢になると、周りには気持ち悪がられていた。
そんな私は今では分析化学者となり、人生のほとんどを仕事のためだけに生きた。それでも、研究のほとんどは失敗に終わり、今はもう倒産寸前だ。
「はぁ……」
仕事の帰り、凍てつくように寒いこの夜の中、私のため息が白く目立った。
仕事をするのが疲れたわけではない、研究が嫌になったわけではない。ただ、それを言うのならば贅沢なのだろうが、私は何にも縛られずに、時間やお金に制限されずに自由に研究したいのだ。
そんな不可能な事を考えながら月日は流れ、ある日の仕事中、理沙の運命が大きく変わる出来事が起ころうとした。
研究結果の報告をしようと立った瞬間、ふらっと目眩がし床に倒れたのだ。
ぼんやりとした意識に感覚が遠のいていき、私の名を叫ぶ声や周りの声がだんだん聞こえなくなっていった。
気がつくと私は何もない真っ白な空間にいて、目の前には十歳くらいの男の子が立っている。
「僕の名前は生命の神ヴィオスです」
とその男の子は神と名乗った。
「生命の神……。私がここにいるということは死んでしまったのですか?」
と私はヴィオス様に質問した。
「はい、そうです。残念ながら、理沙さんは仕事のしすぎで過労死してしまいました」
仕事のために寝ず休まずのことが多くあったので、いつか体を壊し早死にするとは思っていたが、突然のことであまり現実味がない……。
「それで、私はこれからどうなるのでしょうか?」
私がそう言うと、ヴィオス様はニコッと笑いながら、
「理沙さんには異世界に転生してもらいたいと思っています。来世での生活はどのような環境が良いのか、契約書に書いてもらっても良いですか?」
とペラペラと話し出した。
おおー、異世界! 楽しそうだなと私はテンションが一気に上がった。
「年齢や職、能力などなんでも好きな設定を記入して下さい。新しい職や能力を考えて書いても良いですよ」
と契約書とペンを渡された。
少し考えて迷った末、私は職に元素使い、能力に元素を自由自在に操れる能力と書いた。
この世全ては元素によって構成されている。元素使いという職を手に入れたら絶対チート説だ。
「おお!これは面白そうな職を考えましたね」
とヴィオス様も興奮している。
年齢は子供に戻って暮らしたいと思ったため八歳と記入し、最後にサインをした。
すると、契約書の文字が青白く光だし、体がだんだん透明になっていく。
「これで契約完了ですね! 異世界生活を楽しんでください」
と言われ、私はありがとうございますとお礼を言い目をつぶった。
科学者が異世界転生で元素使いになりました 理夢 @ygjihbkdy3579
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