3年生編

第75話 期待と不安と興奮と?

 1年はあっという間だ。


 2年生になって、彼女たちと出会って、多くの時間を共にして。


 3年生になった、僕らは――




      ◇




 新学期、新学年、新クラス。


 とても、ドキドキしちゃう。


 けど……


「何でまーくんと同じクラスじゃないんだよ~!」


 キレていた。


「ゆかり、うるさいわよ」


「しかも、一緒なのが麗美さんとか……ないわ~」


「うるさいわよ」


 ため息をこぼすゆかりに対し、麗美は苛立った表情。


「うわ~ん、せっかく高校生活ラストなのに、まーくんと同じクラスじゃないなんて~!」


「和沙とも離れちゃったしね。まあ、あの子は難関大学コースだから、最初から別だって分かっていたけど」


「はぁ~……まあ、いっか。放課後になれば、またみんなに会えるし」


「そうね……でも、それも程々にしておいた方が良いかもしれないわね」


「え~、どうして~?」


「だって、遊びはもう2年生の内に十分したから。この3年生の時期は、私たちの将来のために使う時間、と考えるべきだわ」


「麗美……なに大人ぶっちゃってんの?」


「私はいつも大人よ、少なくともあなたよりはね」


「とか言って、すぐキレるくせに。あと、まーくんの前では甘えん坊さんになって……むぐぐ!?」


「お黙りなさい!」


 そんな2人の様子を、クラスメイトは遠巻きに見ながら、


((((((超ラッキー!))))))


 喜んでいた。




      ◇




 新しい学年、新しいクラスで、僕らは離れ離れになった。


 もちろん、彼女たちのことは大好きだけど……ずっと一緒に居るのは、何か違うかなって。


 2年生の時は、だいぶ遊んだから。


 3年生になった今この時からは、将来のためにしっかりと勉強しよう。


 それこそ、みんなで幸せな人生を歩むために。


(……とはいえ、知らない人ばかりで緊張するな)


 まあ、元からあまり友達がいない陰キャな僕だから、変わり映えしないけど。


 でも、2年生の途中からは、クラスの男子たちとも仲良くなって……


「だーれだ?」


 ふいに背後から両目を塞がれた。


「えっ、えっ?」


 だ、誰だ?


 僕にこんなことするの、ゆかりちゃんしか思い浮かばないけど……


「ほれほれ~、おっぱいだよ~?」


 背中に押し付けられるこの感触は、それなりのサイズだけど……ゆかりちゃんにしては物足りない。


 ていうか、そもそもクラスが違うし。


 いや、でも感触は何となく覚えがあるような……


「……って、まさか」


 僕はハッと振り返る。


「やほやほ~♪」


 笑顔でショートヘアを揺らす女子がいた。


「さ、桜田さん……!?」


 僕は衝撃に慄き、ガタタッ、と机を揺らす。


「いや~、因果なものだね~。まさか、3年生になって、綿貫きゅんと同じクラスだなんて」


 彼女は言う。


「しかも、ご自慢のハーレムメンバーさんはこぞって、違うクラスみたいだし……」


 ニヤリと笑う。


「これって、コハル絶好のチャンス?」


 キランと歯が光る。


「……さ、桜田さん。とりあえず、落ち着こうか」


「アハハ、コハルはずっと落ち着いているよ~」


 ヘラヘラとして言われる。


「あの、ほら。僕らは今年、3年生で、将来のために大事な時期だから……」


「分かっているよ、綿貫きゅん。コハル、ちゃんと空気を読める女だから」


「ま、まあ、そうかもしれないけど……」


「ただ、ほら。せっかくクラスメイトになったんだから、仲良くしようよ♪」


「うん、それもそうだね。正直、知り合いがいなくて、心細かったし」


「ニャハッ♪ 大丈夫、コハルが色々とフォローしてア・ゲ・ル♡」


「う、うん、ありがとう」


 桜田さんは悪い子じゃないけど……何だろう、完全には信用しきれない。


「じゃあ、綿貫きゅん。まったね~♪」


「あ、うん」


 桜田さんは、笑顔で自分の席に向かって行った。


「……はぁ」


 思わずため息がこぼれてしまう。


 正直、期待よりも不安が大きいけど……


「……がんばらないと」


 ゆかりちゃんも、麗美ちゃんも、和沙ちゃんも。


 そして、僕も。


 将来のために、この1年が勝負なんだ。


 だから、がんばるぞ。


 僕は今までになく、気合を入れた。




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