第56話 ビッチームとご対面

 僕の家は学校からほど近い。


 けど今日は、少しだけ長い道のりを歩いていた。


 ちなみに、1人ではなく……


「……あの、桜田さん」


「んっ? 何だい、綿貫きゅん?」


 振り向くと、彼女のショートヘアがさらっと揺れた。


 愛らしい笑顔を浮かべているが、逆にそれが僕の不安を誘うようで……


「……これから、どこに行くの?」


「コハルんちだよ」


「……そこで、何をするの?」


 僕が問いかけると、桜田さんはニっとするばかりで、ロクに答えてくれない。


 その後も僕は仕方なく、彼女の背中を追う。


「まあけど、その前にちょっち寄るところがあるから」


「寄るところって……」


「コハルのお仲間たちと、合流するから」


「お仲間って……この前、回転ずしで会った?」


「そうそう、我らが『ビッチーム』の面々だね」


 桜田さんは声を弾ませて言う。


 僕はその時のことを、少し思い出す。


『ていうか、綿貫きゅんはしばらくの間、この3人とエッチしないんでしょ? だったら、その間、コハルたちの相手をしてよ』


 どこか挑発的な口調で言う彼女に対して、あの3人が大人しくしているはずもなく……


『そんなの認めるか~!』


『そうよ、真尋は私たちのモノよ』


『譲れません』


 と、食って掛かったのだが……


『あれ、もしかして、自信がないの?』


『『『は、はぁ?』』』


『コハルたちの方が魅力的で、綿貫きゅんが奪われちゃうことが』


『そ、そんなことないもん。あたし達の方が、あんたらよりも……』


『だったら、ちょっとくらい、コハルたちにレンタルしてくれても、良いよね~?』


『『『ぐぬぬぬ……』』』


 ……てな訳で。


 僕は流されるままに、桜田さんに付いて来てしまったのだ。


 でも、やっぱり、こんなこと……良くないよな。


 今からでも、断って……


「おっ、みんな、いるいる」


 僕の思考を遮るように、桜田さんが声を発した。


 彼女が小さく手を振る先には、3人の女子たちがいた。


 この前も、一応は顔を見たけど……


「小春ちゃ~ん!」


 向こうも元気よく手を振って、彼女を迎える。


「ごめんね、待った?」


「ううん、平気だよ」


「じゃあ、お店に入ろうか」


 戸惑う僕はそのまま、彼女たちと一緒に、バーガー屋に入った。


 そして……


「そんじゃ、改めて自己紹介をしよっか」


 僕のとなりに座る桜田さんが、テーブルを挟んで向かい側の3人を差して言う。


「じゃあ、あたしから」


 この中で、1番小柄な女子が言う。


 背はゆかりちゃんよりも小さい、けど……


 ドドオオオオオオオオオオオォン!!


 激しくその存在を主張する2つの物体が、テーブルに乗っかっていた。


 ゆ、ゆかりちゃんよりも、大きい……何だ、あのサイズ。


「えっと、わたしは新海しんかいまほろって言います。高校1年生です。よろしくお願いします」


 ぺこっとされるので、僕も会釈を返した。


「次はあたしね」


 真ん中に座っていた、ポニテの女子が言う。


 何か、ちょっと女王様っぽい雰囲気が、麗美ちゃんに似ているような……


小野寺千鶴おのでらちづるよ。高校2年生、よろしく」


 腕組みをしたまま、顎を逸らして、僕を見下すように言う。


 下手すれば、麗美ちゃんよりも怖いかも……


「最後は私ですね。初めまして、愛地七緒あいちななおです。高校2年生です」


 三つ編みメガネの、大人しそうな子が言う。


 何か、優等生っぽいところが、和沙ちゃんに似ているなぁ……


「ってな感じだね、我がビッチームは。みんな、高校は違うんだけど、仲良しなんだぁ~」


 桜田さんが言う。


「えっと、SNSで知り合ったん……だよね?」


 僕が慎重に尋ねる。


「うん、そうだよ~。みんな、悩んでいてさ」


「悩んでいた?」


「うん、性欲の強さに」


「ぶふっ!」


「ご覧の通り、ルックスが良い3人だから、男にモテまくるんだけど……なかなか、この子たちを満足させる男がいなくてね」


「へ、へぇ~」


「だから、コハルが満足させてあげたの♡」


「はっ?」


「小春ちゃん、同じ女の子なのに、テクが凄かったの~」


「悔しいけど、気持ち良かったわね」


「普段、しっかり地に足をつけている私ですが……天に召しました」


 え、ちょっと待って、それって……


「……このメンバーって、つまりは……桜田さんのハーレムってこと?」


「うん、コハル、どっちもイケるから」


 ビッチ過ぎでしょ!?


「ちなみに、普段はコハルの家で、このメンバーとエッチなことしまくりなんだよ♡」


「え、そんな家で、親の目とか……」


「コハル、両親が海外出張で、今は1人暮らしだからさ~」


 僕と一緒だ!?


「で、コハルの凄テクで、この子たちを満足させてあげてたんだど~……でもやっぱり、そろそろ良い男が欲しいなって。ねえ、みんな?」


 桜田さんが言うと、3人が一様に頷く。


「いや、そんな、僕なんて……」


「何を言っているの。あのワガママな3大美女を、いつもヒィヒィ言わせてんでしょ? そのご自慢のビッグマグナムで」


「ビ、ビッグマグナムって……」


「ねえねえ、小春ちゃんは、このお兄さんとエッチしたことあるんだよね?」


 ロリ巨乳、いや爆乳ちゃんが言う。


「うん。コハル、もちろん男との経験も豊富で、今まで『デカ◯ンハンター』として活動して来たけど……その中でも、1番だったね」


「へぇ~……それは楽しみね?」


 女王様みたいに、頬杖をついて品定めの目を向けて来る。


「私、色々と勉強させてもらいたいです」


 メガネをすちゃと押し上げる、優等生っぷりが間違った方向に行っていますよ?


「んじゃ、この後のお楽しみタイムに備えて、今はたくさん食べようか♪」


 桜田さんは笑顔で言う。


 相変わらず、可愛らしいけど、やっぱり小悪魔に見えて仕方なかった。




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