第91話「知らないもう一つの顔」
「――えぇ、それではご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
佳純、凪沙、真凛を席に座らせた陽は、一人店員と話をしていた。
そんな陽を、真凛は不思議そうに見つめている。
「なんだか、随分と手慣れているような気が……」
「まぁ実際、手慣れてるからね」
「えっ、そうなんですか……?」
「あぁ見えて、交渉事はかなり得意だからね」
佳純と凪沙の言葉を受けた真凛は、先程よりも更に不思議そうに陽を見つめる。
普段無愛想で、他人を突き放すような性格をしている彼が、どうして交渉事が得意なのかが不思議だった。
「対応も丁寧ですよね……」
「うん、猫を被ってるから、そうでしょうね」
「葉桜君って、他人に媚びを売ることはしないと思ってました」
「それは、認識の違いじゃない?」
「えっ?」
認識の違いと言われ、真凛はキョトンとして佳純を見る。
すると、佳純は腕を組んでいる片方の人差し指を立て、真凛の顔を見てきた。
「丁寧な態度はとっているし、必要なこととかは説明するけど、別にゴマはすってないでしょ?」
「あっ、それは……確かに……」
「陽はゴマをすったりしないけど、後々揉めるのがめんどくさいから、相手が何も言えないように先に押さえ付けるだけよ」
「勉強になります……」
「いや、勉強にはしないほうがいいんじゃないかな……」
陽の姿勢を学ぼうとした素直な真凛に対し、凪沙は若干苦笑いをして止めた。
「どうしてですか……?」
「陽君のあれって、完全に計算している対応だから、真凛ちゃんには難しいと思う」
「でも……」
「真凛ちゃんの場合、何も考えずにお願いをするほうがいいよ」
陽は何も考えずに対応してしまうと、相手にとても冷たい態度を取ってしまう。
逆に真凛は、相手のことを大切にしようと無意識に丁寧な対応をするタイプだ。
真凛の場合は見た目の愛らしさもあり、普通にお願いをしたほうがよさそうだった。
「それに、陽のあれって、相手に関心がないからこそできることだしね」
「えっ? どういうことですか……?」
「ここの店員となんて、これから先ほとんど関わることなさそうでしょ? だから、陽は相手にどう思われようといいと思って、上辺だけの対応をしてるの」
「…………」
自分は、まだまだ陽について知らないんだな。
そう思った真凛は、佳純のことが羨ましくて、そしてどこかやきもちを焼いてしまうのだった。
--------------------------------------
あとがき
いつもお読み頂き、ありがとうございます♪
楽しんで頂けていますと、幸いです!
また、本日新作ラブコメ
『幼馴染みいないんだよなぁって呟いたらよく一緒に遊ぶ女友達の様子が変になったんだが』
第1話「幼馴染みがいない――いや、過去にいたあの女の子が、転校しなければ……」
を公開致しました(*´▽`*)♪
是非、こちらもお読み頂けますと幸いです♪
春夏秋冬グループの仲良し四人組が紡ぐ物語を、
どうかよろしくお願いいたします♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます