第48話「戦う道は避けられない」
陽がそんなふうに幼馴染みと母親相手に頭を抱えている頃――。
『そっか、作戦はうまくいったんだね』
真凛は、凪沙と電話をしていた。
「うまくいったと言っていいのでしょうか……?」
楽しそうな凪沙の声に対し、胸の中でモヤモヤを抱いている真凛は自信なさげな声を出す。
真凛はポツンと椅子に座っており、ブラブラと足を遊ばせながら天井を見上げていた。
そして陽とのやりとりを思い出してみるものの、やはり真凛は成功したとは言い難いと思ってしまう。
『陽君がちゃんと考えるって言ったんでしょ? だったら成功だよ』
「どうしてそう思われるのですか?」
『彼は素っ気ない態度をとってるけど、実際はめちゃくちゃ甘い男だからね。有無を言わさず突っぱねられるのが心配だったけど、考える段階に持ち込むことができたならこっちのものだよ』
「本当に、いいお返事を頂けるのでしょうか……?」
『まず間違いなく協力してくれるよ。彼の頭の中には既にもう、自分が断った場合真凛ちゃんを困らせたり、悲しませてしまうっていう想定が浮かんでるだろうからね。そしたらもう断るという道を選ぶことができないのが、葉桜陽という男だよ』
「…………」
一年生の時から陽のことを見てきた真凛は、陽がそんなふうに考えるのかどうかが疑問だった。
しかし、ここ数週間の陽は自分にとても優しかったと思い直し、凪沙の言葉を信じることにする。
「葉桜君にも楽しんで頂けるような動画撮影にしたいですね……」
真凛は陽と一緒に動画を作りたいけれど、それで陽が嫌な思いをするのでは意味がない。
楽しく動画を作り、それで距離が縮むことを願っているのだ。
また、撮影だと言えば陽と早い時間から遊ぶことができるというのも真凛の狙いだった。
そのためにも、陽が楽しむようにできないと意味がないと真凛は思っている。
『あぁ、それなんだけどさ……』
しかし、真凛の言葉を聞いた凪沙はなぜか渋る声を出した。
「何か問題でもありますでしょうか……?」
察しがいい真凛は凪沙の声を聞いて何か不足な事態が起きていることを察する。
そんな真凛に対し、凪沙は申し訳なさそうな声を出した。
『えっとね、ちょっと真凛ちゃんの思い描いている形とは違うことになるかもしれないんだ』
「えっ……?」
『まぁ率直に言うと――やっぱり、戦う道は避けられないかなぁって』
そう凪沙に言われた真凛は、思わず息を呑んでしまった。
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