第3射 異世界に来て初めての○○○
「うーん、興味か寝床か……よしっ、決めた!!」
今後の行動を深く? 悩んだ末に決めると、すぐさま洞窟の目の前まで行ってピタリと止まり、そのまま洞窟の中へ……は入らず、くるりと振り返って洞窟から一直線に伸びる、草一本も生えていない舗装された道を通ることにした。
「やっぱ初めは寝床の確保っしょ!」
ダンジョンには興味あるけど最初は……ね。
つうわけで、取り敢えず街を探して歩き始めたんだけど、正直浮かれてたんだ。
だって、緑の映える木々に綺麗な鳥の囀り、そして前世では吸ったことのない美味しい空気を満喫できてんだぜ? そりゃ浮かれんだろ?
でさ、歩く途中で拾った木の枝を振り回しながら鼻歌混じりに気分良く歩いてたら異常にテンションが上がっちゃってさ、ついついアレをやっちゃったんだよね。
「エクスペクト・パト○ーナムッッッ!!」
しーん……ってなるよな、そりゃ。鳥の囀りも全く聞こえなくなったし。
なんか急に恥ずかしくなって、左手で持った木の枝を捨てて辺りを見渡したよ……見てる奴はいないよな? 大丈夫だよな? って確認するために。
するとさ、その静寂の最中に洞窟の中からすっげぇ叫び声が……
「きゃぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」
……てさ。勿論、あの女のコの声に決まってる。
俺って、一度聞いた女性の声は決して忘れないんだ。変な特技だよな。
てか、しーん……ってさせたことで聞き逃さずに済んだわけだけど、これって助けに行けってことか……? って考えてる間も、身体が勝手に反応して洞窟に向かっちゃってるんだけどね。
やっぱさ、女のコの悲鳴とか助けを求める声って見過ごせないんだよな……だって、俺は男だから……ーー
「ーー……お、おぉ……雰囲気あって怖いな、この洞窟……」
早々に洞窟の中に入ったんだけど、暗くて全然前が見えねぇでやんの。
しかも、ゴブリンみたいな小柄な奴らが棲処にするくらいだから、道幅も3人じゃ横並びで歩けないほどに狭いんだよね。
それになんか、生臭い匂いが充満してるから気持ち悪くなってきたし……てか、この匂いって生臭いっつうよりも……イカ臭い?
「うぇ〜、もしかしてこの匂いって、ゴブリンの精ーー」
「ーーいやぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」
「!? この声は……!?」
これは……あの女のコの声だ! かなりヤバそう、早く行かなきゃ!
声の響き方からして、近くまで来てるのは間違いないな。けど暗すぎて走れないし、いつゴブリンに襲われるか分かんねぇから正直めっちゃ怖い……
「せめて暗視ゴーグルがあれば……チッ、入口にでも置いとけよ! くそがっ!」
つい愚痴っちゃったよ。無いものねだりしたってしょうがないのにな。でもさ、こういう時のために魔法ってあるんじゃねぇの? なぁ、神様?
「……こころ……つよく……ねんじ………」
「……今の声って、神様……?」
なんか聞き取りづらいけど、心から強く念じろって言ったのか? だけど、一体何を? もっと詳しく言ってくれよ。
「……せっし……ならく……みるこ……かのう……」
……せっし? それって窃視魔法のこと? 窃視魔法なら暗闇でも見ることが可能になるのか? なぁ、神様っ!
「……」
ダメだ、交信が途切れてる。
全く、肝心な時に役立たずなんだからよ、あのジジイ。
けどまぁ、こうなったらダメ元で魔法を使ってみるか……でも、魔法の名称が分かんなきゃ使えないよなぁ……じゃあ、一体どうすれば……
「……!! そうだ! 念じろってジジイが言ってた! こうなったらやるしかない!」
取り敢えず、暗闇でも普通に見えるようにイメージして……見えろ、見えろ、見えろ、見えろ、見えろ、見えろ、見えろ、見えろ、見えろ、ミ・エ・ロ!!
【……ヤカン……ミール……】
「……!! キタッ! って、あれ? 今の神様の声か? ってか、え? 名前ダサッ! けど、これを唱えればいいんだよな!」
歩きながらだと集中できないから一旦止まって、暗闇をガン見しながら魔法を唱えてみよう。どうか上手くいってくれよ〜?
「窃視魔法! ヤカンミール!」
うおっ!? なんだこれ!? 洞窟内が嘘みたいに明るく見えるぞ!? さっきまで全く見えなかった道の先も普通に見えてるし!
これは夜の公園で覗きをするのに最適じゃねぇか! って、それより今はあの女のコを助けに行かなきゃ!
「よしっ、これなら俺の瞬足を活かせるぜ! マッハゴー! ゴー! ゴー!」
てなわけで全速力で走り始めたんだけど、少ししたら急にパンパンって音が聞こえてきたから、走るのやめて忍び足で進むことにしたんだ。
で、その音は一定のリズムで鳴ってるんだけど、どこかで聞いた気がするんだよなぁ……確か、前世でよく聞いてたと思うんだけど……
「……あ、思い出した……これ、ヤってる時の音だ……」
音の感じからして、きっと後ろから突かれてるんだ……しかも、思いっ切り打ちつけられてる時に鳴るやつ。
マジか……もう始まっちゃってんのかよ。幾らなんでも捕まんの早すぎだろ……あ、なんか声まで聞こえてきた。
「だから、あっ♡ 言った、あっ♡ のに、あっ♡ 今の、あっ♡ 私、あっ♡ 達には、あっ♡ まだ、あっ ♡早いって、あっ♡」
おいおい、ガッツリ感じちゃってんじゃん。これって助けなくてもいいんじゃね? 寧ろさ、助けたら文句言われたりして、はははっ……
「たわけ……はらま……どうす……しめい……せんか……」
おっ、神様がまた交信してきた……って、はいはい、分かってますよ。孕まされるのは俺もなんかイヤだし、一応使命だし、何より女のコが絶望しちゃうだろうからな……ってなわけで、一刻も早く助けに行きますかね!
「あの十字路の右側から聞こえる……コッソリ覗いてみるか……」
蛇行はしてたけど、ここまで一本道だった。それがここに来て十字路になってんだよな。絶対なんかあるよ、コレ。
そう思って警戒してんだけど、見張りすらいないってどういうこと? 俺だったら十字路のとこに2人は見張り付けるけどなぁ……まっ、いない方がありがたいけどさ。
「ゆっくり、バレないように……おっ、ゴブリンがいる……それに、あの4人も……ん? 他にも人がいる……?」
魔法のお陰で陰影も明るく見えるから隅々まで確認できるな。
んで、十字路の右側は部屋になってるみたいでさ、四角形の部屋なんだけど、どうやらヤリ部屋みたい。
なんで分かるかっていうと、他にも全裸の女のコがあと2人もいるから……ん? あの2人も最近捕まったばかりだな。だってぶっかけられてねぇもん、アレを。
それにしても、ゴブリンってもっと愛嬌のある顔だと思ってたよ。だって、人間の方なんか……
「うーん、やっぱ異世界の人間って顔レベルが高いんだな……前世じゃほぼ見掛けないレベルだぞ? 3人ともレベル80は軽くあるし……」
これじゃあ、顔レベル53の俺なんて見向きすらされないのでは? そんな不安がよぎったよ……助けるのホントにやめよっかな……はぁ……なんてため息を吐いてたら、感じてた女のコの様子が急変したんだ。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あ……痛っ! えっ、なんでそんな強く腰を掴んで……ま、まさか! イキそうなの!? ちょっ、やめて! お願いだからナカには出さないで! お願い! ねぇ! お願い!!」
えっ!? 嘘だろ!? 情報通りマジで早漏なんだな……って、早く助けなきゃナカに出されちまう! こうなりゃ姿を晒して気を引くっきゃねぇ!
「ん待てぇぇぇぇぇーっ!! ソレだけは絶対に許さぁぁぁぁぁーんっ!!」
「「!?」」
おっ、みんなビックリしてんな? ヤッてた奴も動き止めてるし。そんで、ゴブリンの数は……ひい、ふう、みい……6匹か、うん多いな。
てかさ、これからどうやってゴブリンを倒せばいいわけ? 俺っち丸腰なんですけど? まさか、素手で倒せってんじゃないよな……?
「だ、誰……? も、もしかして、助けに来てくれたの……?」
あの女のコ、さっきの拒絶で精神力を使い果たしたんだな……疲弊し切ってるよ。涙を流しながら瞳で訴えてんのが分かる。お願い、助けて……ってさ。
そんなん見せられたら、なんとしてでも助けなきゃじゃん!!
「でも、マジでどうやって……ん? あの早漏野郎、こっち見て笑って……あっ、再開しやがった!」
ふざけたことに、腰振りをやめたはずのゴブリンが俺を見て一瞬ニヤついたと思ったら、再び腰振りを始めやがったんだ。しかも、他のゴブリン共も俺を見てずっとニヤついてるしよ。
これって舐められてるってことだよな? もうスプラッタ化してもいいってことだよな? なぁ、犯し屋さんどもよぉぉぉっ!!
「あっ! ダメ! お願いだからナカだけは! いやっ! いやっ! いやっ! いやっ! いやっ! いやぁぁぁぁぁーー」
「ーーピール!!」
……ふぅ、間にあった……よな? うん、大丈夫だ。避妊紋がちゃんと出てる。けど、女のコはショックで気絶しちゃったみたい。それほどまでにナカへは出されたくなかったんだな……ん? ゴブリン共が警戒してる? 俺が魔法を使ったからか? なら、他の魔法も是非見てもらわねば!
「一気に倒してやんぜ! クイクイック!」
……おぉ、やっぱ時が止まったように感じるよ。まぁ、実際は微妙に動いてんだけどさ。
とりま、速攻でゴブリン共全員に『正義の金的蹴り』をくれてやって、最後にあの早漏野郎の顔面には、渾身の力を込めて『怒りの鉄拳』をお見舞いしてやった。
「いってぇぇぇーっ!! 素手で顔面はダメだ、拳がイカれちまうよぉ……いてて……」
くっそ、なんか武器があればいいんだけど……おっ、壁に剣と斧が幾つか掛けてあんじゃん! 汚いし錆びてっけど無いよりかは全然マシだよな? そんじゃあ、お借りしまっす!
「「ブギャァァァァァーッ!?」」
おっと、魔法の効果が切れたか……にしても、なんて汚ねぇ悲鳴だ。耳が捥げるかと思ったぞ。
「「グ、グゲゲ……」」
……あん? 奴ら座り込みやがった。どうやら魔物にも金的は有効みたいだな! こうかはばつぐんだ!!
でさ、その隙に剣を手にしてみたんだけど、剣道の授業は中学だけだったからぶっちゃけ不安なわけ。斧に限っては握ったことすらないしな。
あっ、それを言ったら剣も握ったことないから一緒になるのか……まぁ、明治剣客浪漫譚やデーモンスレイヤーを熟読してたし、多分やれんだろ。
それに、早く倒して全裸の女のコ達に服着せないと風邪引かれちゃうしな……ん? 異世界に風邪菌って存在するのか……? なんて、そんなしょうもないことを考えてる間に、ゴブリン共が次々と立ち上がり始めちゃったよ……
「あ、しまった……さっさと倒しとけばよかった……」
後悔するなか、異世界に来て初めてのバトルが今始まろうとしていた……
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