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 私がオンライン小説サイト「シャケトワール」に作品を投稿するようになってから、2年になる。小説は中学時代から書いていたのだが、高校に進学したのを機に、たくさんの人に読んでもらおう、と思ったのだ。ちなみにユーザー名は「RIAM」。本名の「麻里まり」をアルファベットにしてアナグラムしたものだ。


 早速いろんなユーザーと交流して「シャケトワール」を楽しんでいた私は、1か月前、ふと気づいた。


 自分のどの作品にも、「この作品を読んだ方は、こちらの作品も読んでいます」の部分に、大抵「Maxwell」というユーザーの作品があるのだ。


 気になって、プロフィールを見てみた。


 何も書いてない……


 だけど作品は結構書いてて、しかも高校生が1人称の作品が多い。だから、最初は私と同じ高校生作家なのかな、と思った。けど……


 大人の不倫ものも書いてたりする……しかも結構生々しい……ちょっとこれは高校生には書けないんじゃないかなあ……


 そして、高校が舞台となったMaxwellさんのある作品の中に「23.7キロの遠足」という描写があったのを見つけた瞬間、私は鳥肌が立つのを覚えた。


 いや、遠足がある高校も珍しくはないだろう。だけど、うちの高校の遠足の距離と小数点以下までピッタリ一致する、というのは……とても偶然とは思えない。どうもこの人、うちの高校の関係者っぽい気がする。


 そう思って他の作品も見てみると、やっぱり地元が一致しているような描写が節々に見受けられる。


 というわけで、私は早速 Maxwell さんをフォローし、メッセージを送ってみた。


 "初めまして! 私、金沢で女子高生やってる RIAM です。Maxwell さんも金沢の方ではないですか?"


 返事はその日の内に来た。


 "初めまして。良く分かりましたね。確かに僕も金沢在住です。よろしくお願いします"


 そして、きちんとフォローバックもしてくれた。作品からも感じていたけど、やっぱり男性っぽい。それも、几帳面な。


 それ以来、私は彼(?)の作品を読んでエトワールを投げたりコメントを付けたりするようになった。彼と私の作風は、どことなく似ていた。シリアスで重苦しいストーリー。苦悩する主人公。破綻なくまとまったプロットは、まるで作者の生真面目な性格を反映しているようだ。


 そして、彼の作品の主人公が多用する、常に予防線を張っているような言い回し。


 これとよく似た物言いをする人を、私は一人知っている。


 米泉先生だ。


 もしかして……Maxwell さんって……米泉先生?


 そう私が考えた理由は、それだけではない。


 彼のユーザー名、Maxwell 。


 これを検索すると、次の人物がヒットする。


 ジェームズ・クラーク・マクスウェル。イギリスの「物理」学者。


 そう。


 物理の先生である彼なら、偉大なる先達の名前を引用することも十分考えられる。


 だけど……これだけじゃ証拠にならない。


 それに。


 もし Maxwell さんが米泉先生だったとしたら……たぶん、あまり身近な人に知られるのは嫌なんじゃないかな、と思う。


 だから私は、このことを胸の中にしまっておくつもりだった。


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