幼両親
シヨゥ
第1話
家にいると息苦しい。その原因は何かと考えたら父さんと母さんにあることに気づいた。
常に寡黙で、それが大黒柱の在り方だとばかり考えている父さん。褒めてもらいたいのが見え見えで、そのせいか幼くすら見える。威厳を出そうとして威厳を殺しているとは絶対に言えない。
そんなところが「かわいいい」と母さんはぼくに話す。そんな母さんは、よく「私のこと愛してる?」なんて質問をしてくる。きっと甘えたいのだとは思う。でも子供のぼくに甘えるなんてみっともない。
だから褒めてもらうことで満たされたいのだとぼくは考えている。そのせいか母さんも幼く見えてしまうのだ。
こんな子供のような両親を目の前にしてぼくの発言の自由を奪われているに等しいと思う。
厳格な父親を演じる父さんに対しては、その理想像にどっぷり浸っていてもらうために口答えをしてはならない。ぼくも理想の子供を演じる必要があるのだ。
甘えん坊の母さんに対しては徹底的に肯定してあげる必要がある。そうしないと不安定なのだ。不安定な母さんを見ると父さんの厳格さも不安定になる。だからぼくは母さんの信者を演じなければならない。やることなすことすべてが正しいと言って聞かせなければならない。それが家庭のためなのだ。
「家庭のために生きるってぼくは大黒柱か」
ここまでの考えをまとめて自分にツッコミを入れてしまう。そうでもしないとやってられないぐらいにハードな状況に陥っているように思う。
「早く家を出ないとな」
独立。それしか逃げ道がないように思えた。
「とりあえず勉強頑張るか」
現実逃避でより現実に引き戻されたぼくはペンを握る。これは自由への闘争だ。そう思い込むことでやる気を高ぶらせるのだった。
幼両親 シヨゥ @Shiyoxu
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