第135話
「うっすらと覚えててはっきりと安藤くんだっていうのはわからなかったんだけど…でも、誰かに助けてもらったのは覚えてて…あはは。やっぱり安藤くんだったんだね」
「いや…その…」
どうやって誤魔化そうか。
俺が必死に思考を巡らせていると、ペコリと宇崎が頭を下げた。
「安藤くん。助けてくれてありがとうございます。おかげさまで生き延びられました」
「…お、おう」
ほぼ直角の御辞儀。
いきなり丁寧にお礼をされて俺は戸惑ってしまう。
「えへへ」
顔を上げた宇崎が、少し照れたように頭をかいた。
「…っ」
可愛い、とそう一瞬思ってしまい、俺は慌てて首を振った。
「そ、それより…大丈夫なのか…?家が燃えたのに…今日学校に来るなんて…家族とかは…無事だったのか…?」
少し聞きにくいことを聞く。
だが、意外にも宇崎の答えはあっけらかんとしたものだった。
「あ、家族とかは住んでないよ。一人暮らし。高校に上がるときに、一人暮らしを体験してみたいなって思って親に頼み込んで、あの部屋は一人で使ってたの。実家がすぐ近くにあって、大切なものとかもそっちにあるからあんまり被害は少なかったよ。教科書とか参考書とかは燃えちゃったけど…うん」
「そ、そうなのか…」
どうやらそこまでの被害は受けなかったらしい。
俺は微妙な雰囲気にならなかったことを安堵する。
「家族には今日は休んだほうがいいよって言われたんだけどね…でも、きちゃった。どうしても安藤くんに会いたくて」
「え…俺に…?」
「うん。私を助けてくれたのが安藤くんだって確認するのと…もしそうなら早くお礼が言いたかったから」
「そ、そうか…助けられてよかったよ…」
俺は頭をかきながらそういった。
宇崎はどうやら律儀な性格らしい。
「それで安藤くん…どうやって私を助けてくれたの…?私正直、意識失う前、死んだなって思ったんだけど…」
「…いやそれは」
「安藤くんのスキルって確か炎を操るものだったよね…?他にもスキルが…?」
「う…」
痛いところを疲れた。
どうする。
宇崎の記憶を奪うか…?
しかし、ここはあまりにも人目がある。
今は適当に誤魔化して、とりあえずこの場を切り抜けるべきか…?
俺が思案していると、宇崎がポンと手を打った。
「あっ…!そっか…!もしかして安藤くんのスキルって…自分の炎だけじゃなくて、周りの炎とかも操れたりするの…!?」
「…!?」
言い訳を考えて頭を悩ませていると、宇崎がまさかの俺に都合のいい解釈をしてくれる。
当然、俺はこの好機を逃すまいと乗っかることにした。
「そそそ、そうなんだよ…!よく気づいたな…!実はそうなんだ…!俺は自分で起こした炎だけじゃなくて、周りの炎も操れるんだよ…!!」
「やっぱりそうなんだ…!へぇええ、すごいなぁ…!」
宇崎が感心したように俺を見る。
「ははは…」
危なかった…
俺は心の中で安堵の息を吐きながら、頭をかいて笑った。
「ま、まぁ…大変だったけど、宇崎が無事でよかったよ…それじゃあ、俺はこれで…!」
「あ、ちょっと待って…!」
ボロが出ないうちに離脱しようとした俺の制服の裾を宇崎が掴んだ。
「ま、まだ何か…?」
恐る恐る振り返る俺に、宇崎が少し顔を赤くして言った。
「安藤くんってさ…今誰か付き合ってる人とかいる?」
「…は?」
〜あとがき〜
新作が公開中です。
タイトルは
『モンスターの溢れる現代日本で俺だけレベルアップ&モンスターに襲われない件〜高校で俺を虐めていた奴らは今更助けてと縋ってきたところでもう遅い〜』
です。
内容はタイトルのまんまで、
• 突如モンスターが現代日本に出現。
• 主人公だけモンスターを倒すとレベルアップ。
• 何故か主人公はモンスターに襲われないため、モンスター倒し放題。
と言うものです。
興味を惹かれた方は是非そちらの方もよろしくお願いします。
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