第100話


その後、俺は助けた男……衛宮によって色々と質問を浴びせられた。


名前、年齢、探索者歴、探索者ランク等々。


俺はさっさと解放されたいがために、衛宮の質問全てに手際よく答えていった。


衛宮はその間中何故かずっと端末を俺に向かって向けていた。


動画でも保存しようというのだろうか?


時折…『どうせつ』がなんたらと仕切りに呟いていた。


俺にはなんのことだがわからない。


そうこうしているうちに、ようやく衛宮のマシンガンのような質問が終わった。


なんだかどっと疲れた俺は、はぁ、とため息を吐く。


「いやー、まだ高校生でしたかー、驚きですよ、安藤さん!」


衛宮が親しげに肩を叩いてきた。


距離感が近いというか…正直言ってちょっと鬱陶しかった。


というのも何か衛宮はテレビタレントのように無理やりこの場を盛り上げようとしているような、無理している感じが終始あった。


何かキャラクターを演じているのだろうか。


わからない。


ともかく俺はさっさとこの場を後にしてクエストをこなしたいと思っていた。


衛宮を倒すときにオーガを一体討伐して、後残り9体の討伐を今日中に終わらせなくてはいけないのだ。


「そろそろ俺は行くぞ…受注したクエストもある。ペナルティを食いたくないんだ」


「おお、そうでしたか…!すみませんすみません……ちなみにクエストの内容を聞いても?」


「オーガ10体の討伐だ」


「オーガ10体…!すごいですねぇ…!中級探索者経った一人で、そんなクエストを受けるなんて……ハードじゃないですか?大丈夫ですか?」


「問題ない…じゃあ、俺は行くから」


無理やりにでもこの場を離れないと永遠に解放してもらえないと気づいた俺は、衛宮の返事を待たずにさっさと歩き出す。


「あっ、待ってください。自分も行きます」


「…?」


すると、あろうことか、衛宮が端末を持って慌てて俺についてきた。


「いや…どうしてついてくるんだ?」


「えー、せっかくこんな強い探索者にあったんですよ?当然じゃないですか!!」


「この先は危険だ。あんたは引き返せ」


「無理無理!それは無理ですよ!!この機会を逃したら俺、配信者として生きてる意味皆無っす」


「はいしんしゃ…?」


「あ、こっちの話です」


「…?よくわからんが、どうなっても知らないからな?次は俺は助けるとも限らない」


さっさと離れて欲しかったために俺は半ば脅しのようにそう言ったが、衛宮は引き下がらない。


「どうぞどうぞ。自分は勝手に後ろからついていくだけですから」


「…はぁ」


この男を引き剥がすのはどうやっても無理だ。


早い段階でそう判断した俺は、もうどうにでもなれという気持ちで衛宮の同行を許した。


「よっしゃ!!それじゃあ、行きましょうか…!」


相変わらず端末を大事そうに抱えた衛宮が音頭をとる。


俺は頭が痛くなる思いで、歩みを再開させた。






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