第68話


アンノウンのデパート襲撃から二日後の月曜日。


朝、俺はいつもの時間帯に学校へ登校してきていた。


きっと生徒たちは二日前のアンノウンの話で持ちきりなのだろう。


そう思って教室へと入ってみたら、生徒たちが話していたのは全く別の話題だった。


「おい、聞いたか?」


「ああ、聞いた聞いた。転校生が来るんだろ?」


「まじで…!?ガセじゃねーの!?」


「どうやらまじらしいぞ…」


「なんでこの時期に…?」


「わからん。けど、女らしいぜ」


「よっしゃ!!美少女こい!!まじで美少女頼むっ!!」


聞き耳を立てていると、どうやらこのクラスに転校生が来ると言うことだった。


噂をしている彼らじゃないが、本当にどうしてこんな時期に。


わからないが、どうせ多分関わり合いになることはないだろうから、俺には関係ない話だな。


…なんて思っていた時期が俺にもありました。


「もうすでに聞いていると思うが…今日このクラスに転校生がやってくることになった。入ってきなさい」


いつもよりも少し早めに教室へとやってきた担任教師が、教壇に立ってそう宣言した後、教室の外に向かって手招きをした。


すると開いているドアから転校生が教室の中へと入ってくる。


「「「おぉ…!」」」


男子からざわめきが起こった。


ツカツカと入ってきたのが、黒髪ロングのお淑やかな美少女だったからだ。


一言で表現するなら、良家のお嬢様。


そんな雰囲気がある。


「すごい綺麗…」


「髪の毛サラサラ…」


「背筋真っ直ぐ…」


男子だけでなく女子もその容姿と所作に見惚れているようだ。


その女生徒は、皆に注目されながら教壇に登り、丁寧なお辞儀とともに名前を口にする。


「この度転校してきました、四ツ井恵理子と申します。みなさんよろしくお願いいたします」


「「「おおおお…!!」」」


簡潔な自己紹介だったが、パチパチパチと拍手が起こった。


早くもクラスメイトたちは歓迎ムードとなっていた。


「すごい綺麗…」


「どこかのお嬢様…?」


「ザ・大和撫子って感じ…」


「足長いなぁ…」


皆が興味津々といった視線を四ツ井に送る中、俺は何かが頭の中に引っかかっていた。


あの顔、四ツ井という名前…どこかで…


「あっ!」


思い出してしまい、小さく声を上げる。


そうだ…!


あいつ、あの時ダンジョンでオークに襲われているところを俺が助けた女探索者じゃないか…!?


俺は確認するために四ツ井を見る。


するとちょうど四ツ井もこちらを見ていて、俺と目があった。


「…!」


四ツ井が俺に対してにっこりと笑った。


「…っ」


悪寒が背中を通り抜けていった。





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