第49話
偶然が功を奏して、攻略組の探索者たちがレイスの弱点が回復スキルであることを理解した。
「き、効いてる…!」
「やはり見えないが、ボスは確かにそこにいるんだ…!」
「い、今…回復スキルが被弾したから、だよな…?」
攻略組たちからはレイスの姿は目視できない。
しかし、一度響き渡った悲鳴のような鳴き声と、宙に浮いた鎌が交代していくのをみて、彼らは回復スキルがボスモンスターに有効に作用したと判断した。
『ご、ご覧ください…!宙に浮いた鎌が…小刻みに震え、交代しています…これは、効いている証拠なのでしょうか…あぁ、本当に安心しました…一時は我々はここで死ぬのだと覚悟しましたが…どうやら正気が見えたようです…』
レポーターが切実な実況をする中、リーダーが、回復スキル持ちの女に向かって指示を出した。
「リナ!!回復スキルをあいつに向かって使い続けてくれ!!みんな!!全力でリナを守るぞ!!」
「「「おおお!!」」」
リーダーの指示で回復スキル持ちの女を守るようにして、他のメンバーが陣形を組む。
レイスは真っ先に回復スキル持ちの女を狙っ
て攻撃してくるが、他のメンバーががっちりガードする。
「いまだリナ!!やれ…!」
「うん!!回復!!」
女が回復スキルを使う。
『キエエエエエエエエエ!!!』
再びレイスから悲鳴が上がる。
「よし、効いているぞ!」
「やっぱり回復スキルが弱点なんだ!!」
「レナ!このまま畳みかけろ!!」
「俺たちが全力で守る!!」
「うん!!」
どうやら女の回復スキルにクールタイムや回数制限はなかったようだ。
その後、女はレイスに対して回復スキルを連発し、レイスは完全に消え去った。
カランと、宙に浮いていた鎌が地面に落ちる。
それと同時に、背後で閉じていた入り口が開いた。
ボスモンスター討伐の証だ。
「うおおおおおお!!」
「勝ったああああ!!!」
「討伐成功だ!!」
「よっしゃあああああ!!」
攻略組のメンバーたちが歓喜の声をあげる。
『やりました!!またやってくれました!!日本が誇る最強クランの一角、紅の騎士団が、また新たなレコードを打ち立てました!!』
リポーターが興奮した声でボス戦に勝利した攻略組を称える。
「すごい!!勝ったよお兄ちゃん!!勝ったよ!!」
飛び跳ねて喜ぶ。
「ああ。そうだな」
俺も内心、ほっと息を撫で下ろしていた。
彼らが最後までレイスの弱点に気づかんかあったら、探索者は愚か、テレビ局のスタッフまでボスモンスターに殺され、血塗られた惨殺ショーが日本全国に放送されることとなっただろう。
そうならなくて本当によかった。
しかし、彼らも運がいい。
クランメンバーの中に回復スキル持ちがい
て、しかもそれがたまたまレイスにヒットしたんだからな。
「おめでとう…ええと、なんとかの騎士団の人たち」
俺は未知の階層に挑み続ける画面の中の勇者たちに賞賛を送る。
なんだかアルカディアで修行中だった頃の自分を見ているようで、微笑ましいな。
ちなみにその番組の視聴率は歴代最高の85%をマークし、日本だけでなく全世界で大々的に報道されることとなったのだった。
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