第50話
翌日のクラスは昨日の攻略組のボス戦の話で持ちきりだった。
「おいおい、見たか、昨日の攻略組のボス戦!!」
「ああ、見たぜ!!まじでドキドキしたよな!!」
「ああ!俺、絶対に紅の騎士団が負けたと思ったぜ!!だって、スキルがほとんど通用しなかったからな!」
「そりゃそうだろ!!まさか回復スキルが弱点なんて…誰も想像してなかっただろ」
「でも本当に勝ってくれてよかったよな…紅の騎士団が負けたらテレビ局の奴らもボスに殺されてたぜ」
「それなー…改めて、ダンジョン系の番組って無茶してるよな…その分視聴率取れるんだろうけどさ」
クラスメイトたちが興奮冷めやらぬといったふうに語り合う中、俺は放課後のダンジョン探索のことについて考えいてた。
昨日の攻略組のボス戦をみて、俺も久々にダンジョンの深層へと潜って強いモンスターたちと戦いたいと思ってしまった。
アルカディアにいた頃はよく1人でダンジョン踏破とかとしていたっけ。
最近戦った一番強いモンスターといえばトロールだが、正直物足りない。
ダンジョンの深層…特に八十階層以降というのは、古代魔法を使わないと勝てないような強力なモンスターがウヨウヨしているのだ。
そんな化け物たちと、歯応えのある戦いがしたい。
…けれど、たった1人で無闇にダンジョン開拓をするのもいけない。
たった1人の探索者が…それも探索者になって数日の高校生が、1人でダンジョン到達階層のレコードを破ったとなれば、確実に騒ぎとなる。
そうなれば身辺操作とかされたりして、確実に面倒なことになる。
それは俺の望むことじゃない。
俺が探索者になったのはあくまで金のためで、妹の美久を貧乏生活から救うことだ。
その目的を達成するためには、別に深層に潜らなくてはいけないわけではなく、十層や二十層のボスモンスターを倒すだけで十分に事足りる。
「まぁ、我慢するしかないよな…」
ここは強いモンスターとの戦闘は諦めて、とにかく身を潜めつつ、二十階層までの低層で稼ぐのが無難だろうな。
俺はうかれているクラスメイトたちを横目に、そんな方針を固めたのだった。
そして放課後。
ホームルームが終わると、俺は早速荷物をまとめて校舎を出た。
正門から校内の外へと出て、ダンジョンへと向かう。
その途中のことだ。
「ん…?」
俺は誰かに尾行されていることに気づいた。
最初は気のせいかと思ったのだが、しかし、時間が経つにつれて確信に変わる。
背後、20メートルほどの距離。
明らかに挙動が俺を尾行しているもののそれだった。
一体何の目的で…?
「仕掛けてみるか…」
少し不気味に思った俺は、本来の道を外れて、脇道にはいった。
尾行者も俺についてくる。
人気がないところまでやってきた俺は、後を唐突に振り返った。
尾行者は電柱へと身を隠す。
「出てこい。さっきからつけているのは気づいているぞ」
俺が身を隠した尾行者に向かってそういうと、観念したようにそいつは電柱の影から出てきた。
そして帽子をとり、素顔を晒す。
「このような御無礼をお許しください、省吾様。初めまして。私こういうものでして」
まるで何事もなかったかのようににっこりと笑い、俺の元まで歩み寄ってきて名刺を差し出す。
「え…」
俺は目を丸くする。
渡された名刺には誰もが知っている有名探索者クランの名前があった。
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