第38話
「おい、安藤!何してくれてんだ?」
「どこにパス出してんだよ?」
「お前のせいで負けじゃねーか。責任取れよ」
チームメイトの男どもが詰め寄ってくる。
まるで何もかも俺が悪いみたいな言い草だ。
「待て待て。悪いのはスキルを使ったあいつだろ?なんで俺だけが責められてるんだ?」
俺としては当然の抗議をしたつもりだった
が、しかし、彼らは聞く耳を持たない。
相手チームの糾弾は一切せずにひたすら俺を責め続ける。
「お前らなぁ…」
俺はあまりにも露骨な彼らに呆れてしまった。
結局こいつらは何も変わっていない。
ダンジョンが地上に現れてから半年。
こいつらは俺から興味を失い、積極的にいじめてくることがなくなった。
俺は彼らが自分を見つめ直し、改心したのかとも思ったが、全然違った。
スキルを得ようと、こいつらの本質は何も変わらない。
自分よりも下だと思った人間を、こうやって機会さえあれば集団でリンチする。
最低のクズ野郎どもだ。
「おい、乞食野郎。最近いじめられなくなったからって調子乗ってんじゃねーだろうな?」
「お前はどこまでいっても元いじめられっ子の底辺なんだよ。身の程を弁えろ」
「中級探索者になれたのだって、何かイカサマをしたんだろ?じゃなきゃお前みたいなのが、探索者試験に合格するはずはないんだよ!!」
口々に罵詈雑言を浴びせてくる。
「うるさい。黙れ」
「「「…っ!?」」」
ごちゃごちゃとうるさい彼らを一喝し、ちらりとタイマーに目を移した。
試合の残り時間は三秒。
点差は2点。
つまり、スリーポイントシュートを決めれば、こちら側の勝利となる。
「三秒もあれば…間に合うな」
「あ?」
「何言ってんだ?」
首を傾げるチームメイトを無視して、俺はボールを彼らから奪う。
「ボール、出せよ」
「はぁ?」
「俺が決めてやる。勝てば、いいんだろ?」
「何言ってんだお前?」
「タイマー見てみろ」
「あと三秒しかないんだぞ?」
「何が出来るってんだ?」
「俺たちは負けたんだよ。お前のせいでな」
「うるさい。いいからボール出せ」
「…っ!!」
「こいつ…っ!」
「はっ。いーぜ。出してやるよ。何を企んでんのかしらねーが、負けたら責任取れよ」
1人がゴールしたへ行き、ボールを俺に出した。
タイマーがスタートする。
残り時間は三秒。
相手チームは全員下がってディフェンスをしている。
これなら、誰にも邪魔されずにこの場所からシュートを打つことができる。
「おいおい!まさかそこから打つきか?」
「アホなのか?」
「入るはずねぇよ!!」
チームメイトが冷やかす中、俺はハーフコートも超えていない場所から投げるようにしてシュートを放った。
「え…」
「は…」
シュートは放物線を描き、リングへ向かって飛んでいく。
「少し…右か?」
ボールが空中にある間、俺は風魔法を使って、その軌道を修正していく。
ピイイイイイ!!!!
試合終了のブザーがなった。
同時に、パスっとシュートの決まる音がする。
ブザービート。
3点が入って俺のチームの勝ちだ。
「「「「…」」」」
静寂が辺りを支配した。
味方チームも、相手チームも、口をあんぐり開けて瞠目している。
「これで満足か?何か他にいうことはあるか?」
俺は先ほどまで冷やかしていたチームメイトたちに言葉を投げかける。
「「「…」」」
チームメイトたちは、あまりの衝撃的な出来事に、絶句して何も言えないでいた。
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