第20話


突っかかってきた三人組を懲らしめた俺は、その後、何食わぬ顔で教室に戻り、普通に授業を受けた。


三人はなかなか戻ってこない。


まだ気絶しているのか、それとも帰宅してしまったのか。


わからないが、俺の感知する必要のないことだな。


「くあぁ…」


教壇で何やら解説している教師の声を聞いていると、自然と欠伸が出た。


というのも、今の俺にとって学校の授業は非常に簡単で退屈なものだったからだ。


アルカディアにいるときに、俺は即暗記という魔法を覚えており、それを使って全ての科目の教科書を丸暗記した。


その結果、一年分の履修範囲を一瞬でマスターしてしまい、学ぶべきことがなくなってしまったのだ。


故に、授業で解説されていることはもう頭の中に入っており、俺は毎日退屈な時間を余儀なくされている。


「…」


窓際の席で、外の景色を見ながら、ポカポカと温かい日差しに当たっているとだんだん眠たくなってきた。


そして俺は気づけば、窓にもたれかかって居眠りを始めてしまった。


「こらあああ!!安藤!!授業中に寝るなっ!!」


「…っ!!」


唐突に怒鳴られ、俺ははっと目を覚ます。


見れば、教壇に立った担任が俺のことを睨んでいる。


どうやら居眠りしているのを見られてしまったようだ。


「すみません」


すぐに謝って姿勢を正すが、担任の怒りは収まらなかった。


「一体なんだその不真面目な態度は!!今はダンジョン科の授業だぞ!!ろくに知識を身につけずに、将来社会でやっていけると思っているのか!!」


「…すみません」


ダンジョンの知識だったら、細部まで頭に入っています、なんて本音をしまいこんで、俺は素直に謝った。


まぁ、授業中に寝ていたのは俺が悪いからな。


「こっちへ来い!!前に出ろ!!」


「…」


俺は相当怒り心頭の担任によって前に歩かされる。


てっきりビンタでもされるのかと思ったが、どうやら違うようだ。


「さあ、この問題を解いてみろ!!」


「え…?」


黒板の問題を指差して、俺にチョークを渡してくる。


「寝てられるほど余裕があるのなら、当然この問題を解けるよな?ダンジョン五階層から出現するオークの生態に関する問題だ。さっさと解け」


「いいですけど…」


問題文を見て即座に答えが浮かんでいた俺はすぐに答えを書き込み始める。


「はっ…間違えたら居残りさせてやる」


「…」


背後から担任のものすごい圧を喰らいながらも、俺は答えを書き終えた。


「出来ました」


「な…なっ…」


担任が悔しげに表情を歪める。


「正解だ…」


「ありがとうございます」


俺はお辞儀をして席に戻ろうとする。


だが、そんな俺の肩を担任がガシッと掴んできた。


「待てっ!!確かにこの問題はあっているが、貴様の授業態度は最悪だ!!指導が必要だ!!よって居残りを命ずる!!」


「え…さっき間違えたら居残りだと…」


「うるさいっ!!口答えするなっ!!」


担任の腕がブゥンと唸る。


そのまま俺の頬を張るつもりだったんだろうが、あまりにスピードが遅すぎたために、俺は思わずその腕をパシッ!とキャッチしてしまった。


「あ…」


「なっ!?」


担任が腕を引っ込めて驚愕の表情をする。


何かを恐れるように二、三歩後ずさった。


「もう行っていいでしょうか?」


「…っ」


俺が尋ねると、ガクガクと担任が頷いた。


俺はにっこりと笑ってから自分の席に戻った。


「の、残りの時間は自習っ!!」


俺が席に着くのと同時、調子を乱された担任が、悔しげにそう言って教室を出て行った。


生徒たちが、くすくすと担任を笑う。


「…ちょっとやりすぎたか」


俺は若干担任が気の毒に思えてきた。


居眠りをしたのは間違いなく俺が悪いのだし、ビンタぐらいは受けておくべきだったか。


しかしなぁ…


あの担任、ダンジョンが出現する前、クラスで俺がいじめられているのを知っていて黙認してたからなぁ。


個人的にああいう輩は教師とは思えないし、大人しくお説教を受ける気にもならないんだよなぁ。


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