第32話


美化委員にわりと大きめなビニール袋を渡されて、この袋いっぱいにゴミを拾ったら解散というざっくりしたルールを告げられる。



矢代は案の定、他にいた何かしらの償いをさせられているボランティアの中に仲良しの友達を見つけて2人でおしゃべりをはじめてしまって、私はぽつんと1人残された。



仕方なしにビニール袋をプラプラさせながら借りたトングで落ちてるゴミを拾って、今日は奇跡的に矢代といっぱい話したなぁと思った。



たしかに、矢代と話せなくなるのはつまんない。


くだらないことでもなんでも、矢代と話してるとそれはとびきりおもしろいことになるから。



でも、それってやっぱり私が矢代を好きだからで、矢代にとってはなんてことないんだろうな。



……なんてことないのかな?



なんてことないなら、私と話せなくなるのは嫌だなんて言わないよね?


そもそもなんで嫌なんだろう。


私と話すと楽しいのかな?


それって私のこと好きってこと?


いや、ちょっと冷静に——めっちゃいい友達って言われたじゃん。



つまり、性別的な意識がないってこと?


裸になって初めて、やべ女だったわ、みたいな感じ?


それならいっそのこと脱いじゃう?



そこまで考えてしまって、自分にうんざりした。


拾ったばかりのラムネの空容器を地面に叩きつけてやった。


「ほんと、私ってバカじゃないの?」



一時停止なんてできるはずがない。






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