第18話
「何?」
そう冷たく言ってしまったのは、お腹がまだ微妙に痛かったからだし、イライラが抜けていなかったからだし、恐怖心を隠せなかったからだし、それに嬉しいの反対の気持ちが真っ先に突き抜けてしまった天邪鬼な性格のせいだって理解してほしい。
そう願ったって伝わるわけでもなく、耳元で私の心臓を震わせる矢代の声がした。
『はる、お前んちどこ?』
「……え?」
『だから、お前んちどこって聞いたんだよ。行くから、なんつーか、話したいことある』
「……」
私の脳が警鐘を鳴らしている。
これはアズやカノコの時よりひどいんじゃないかと。
そう、私たちは、私と矢代は仲が良かったと思う。
だからこそ、アズやカノコとは違う何かが、きっと私の生きる気力みたいなものを削る何かがあるんだと思った。
わざわざ矢代が覚悟を決めて電話するほどに、重要な何か——私にとっては致命傷な、何か。
『はる?』
「……明日じゃだめなの?」
『たぶん』
「たぶん?」
『あ——あの、お前さ、はる? 俺、お前にムカついてる』
ぎゅん、と内臓の全部が半分くらいに縮んだ気がした。
『だから話したい』
「……ねえ、そんなふうに言われるとやだよ。私、矢代が好きって言ったばっかりだよ。忘れた?」
なんの考えもなく口走った言葉は、さすがにやっちまったとしか言いようがなかった。
口ごもった矢代があいまいな声を出している。
私は慌てて、もう間違えちゃいけないと「わかった」と言うしかない。
薬、飲んだはずなんだけどなぁ——右手で下っ腹をさすりながら天井を仰いだ。
どうしよう、それでも今日は一度も見られなかった矢代の顔が見たい。
私って重症なのかも。
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