第12話 文化祭実行委員(葵視点)
「じゃあ今日は文化祭の事について色々決めるよ〜」
教壇に立っている小さな先生。
文化祭…うちの文化祭ってどういう風のなんだろ? 興味なかったからどんなのか分からないや…
私がこの学校へと進学を決めた理由は、此処が1番近く、学費を1番安く済ませれる学校であったからだ。それ以上もそれ以下もない。
葵は頬杖を着きながらつまらなそうに聞いていると、
「出し物って例えば何やるんですか?」
1人の男子生徒が手を挙げて質問する。
「うちの学校の文化祭はここら辺でも大きな文化祭だからね〜、まず1クラスに1つ神輿を担いで商店街を歩いてもらうよ〜」
「え! 凄っ!!」
「逆に知らなかったのかよ」
「これがあるから頑張って此処に入学した様なもんだぜ!」
男子達は大盛り上がりで騒いでいる。
それに対して女子はそこまで盛り上がっていない。
神輿するってなると、汗かくだろうし、メイクとか崩れそうだもんね。私もぶっちゃけ神輿はそこまで嬉しくない。暑いし、疲れるし。それだったら中で本読んでる方がマシだ。
「あと、学校の敷地内の何処かで屋台とか出し物をするからね〜」
大山先生からそう告げられると、今度は女子が少し盛り上がる。
「出し物…メイド喫茶とか?」
「ちょっと〜嫌だよ〜!」
「えー! じゃあお化け屋敷とかは?」
うーん、どちらも大変そうだ。
私は極力こういうイベント事は、静かに過ごしたい派だ。なるべく大人しくしていよう…。
「じゃあ、その何か出し物をやるに当たって、文化祭実行委員を2人決めるよ〜。誰かやりたい人とかいる〜?」
大山先生からの言葉で、一瞬にして教室が静まり返る。
それもそうだ。好き好んで大変そうな役割をしたがる人はいないでしょ。
「だよね〜…だから今回私が頑張ってクジを作ってきました〜」
大山先生が教壇の上に取り出したのは、上に穴が空いた小さな箱。そこからは何本か割り箸の様なものが飛び出している。
「これから当たりを引いた人は委員って事で〜」
皆んなが顔を顰めながら、ぞろぞろと立ち上がり、列を成す。
…絶対なりたくない。
そう思いながら葵は、ゆっくりと列の最後尾に並んだ。
「は〜い。じゃあ決まったみたいだね〜文化祭実行委員は、
「げぇ〜! ついてねぇ!!」
「…」
大山先生は窓際に机と椅子を置くと、疲れたとも言いたげに突っ伏し、私と高波くんは、黒板の前に立つ。
…はぁ。最近私、運使い果たしてるかも。
葵は少し息を吐き、前を向く。皆んなの視線は私達が2人に集まっている。
「流星! ついてねぇな!!」
「しっかりねー!」
「ハハッ! 少しは役に立てよ〜!」
「う、うるせぇ! 分かってらい!」
高波くんは、友達と楽しそうに話している。
高波 流星くんは、少しガラの悪い様な風貌をしている。まぁ、ガラの悪いと言っても少し制服を着崩してきてるぐらいだけど、男女問わず仲がいい、所謂陽キャの人だ。
そして親しみやすい性格で、皆に愛されている。顔もイケメンの部類で、ガラの悪さが少しあるが、それが女子には良いらしい。
まぁ、私は何とも思わないけど。
「よーし、じゃあ皆んなやりたい事言えー」
高波くんがそう言うと、クラスの皆んなからドンドンと意見が出てくる。
「お化け屋敷やろう!」
「メイド喫茶でしょ!」
「焼きそばやりたい!」
「焼き鳥!!」
etc…
うわー…凄い。
「マジか…こんな出るんかい…神原さん、板書してくれない?」
「あ、うん」
高波くんもこれは予想してなかった様で、驚きの表情を浮かべ、私は高波くんの指示通り、板書を始めた。
「ん…あ、もうこんな時間ね〜。皆んな終了〜。また時間はとるからね〜」
そう言うと、教室にいる人達は各々昼休憩に入る。
「はぁ…疲れた」
私は小さく呟き、首を回す。ずっと板書をしていた所為か、腕も疲れた気がする。これから部活もあると言うのに、もう1日分の力を使い切った…特に精神が。
実行委員になっただけで、これ…。
本当に最悪。
葵は眉間に皺を寄せて、自分の席へと戻る。
「あ、神原さん。ちょっと良い?」
その途中で、さっきまで聞いていた声が私を呼び止める。
「…何?」
「少し時間、さ…良いか?」
高波くんは少し俯きながら言った。
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