『オトメ♡研究同好会』の恋多き日常
天音 いのり
プロローグ
ご存じだろうか。ここ『山田学園』には、とある伝説がある。ちょうど今、その伝説を実践しようと試みている、入学したてのほやほや一年生がやって来た。
「ねぇねぇ、A子ちゃん。ちょっと付き合ってよ」
「どこに?トイレ?」
「ち、が、う、わ、よ。決まってるじゃない、オト
「はあ?何それ。ていうか、名前ださ…」
「ちょっ、罰当たるよ。まぁ、ここの生徒はみんな思っているけどね。口に出しちゃいけないって、決まっているんだから。それよりA子ちゃん、オト女神像も知らずにこの学校に来たの?超有名な話じゃない」
「聞いたこともなければ、見たこともないんだけど。本当にそんなもの、あるの?」
「あるよ。まだ、見たことないけどね。ほら、早く付いて来て。多分、こっちの方にあるはずだから」
A子と
「お…なんとか像って、これ?」
「オト女神像ね。なんだか、名前通り…ね」
「それで、この像を拝むと何が起こる訳?」
「なんと」
「なんと?」
「恋人ができる」
「…」
「ちょっ、絶対信じてないでしょ」
「うん。一ミリも」
「そんなに笑顔で言わないで。まぁまぁ、見てなさいよ。私が証明してあげるから」
「茉莉がそういうなら、面白そうだし。いいよ。見ていてあげる」
「どうか、この私に素敵な彼氏を恵んでください。お願いします。お願いします。お願いします」
「…本当に、こんなのでいいの?」
「多分」
がさっ、ごそっ。
「今、何か動かなかった?ほら、あの辺り」
「さぁ、狸でも通ったんじゃないの。よし、用事も済んだし、あとは効果に期待だね」
狸扱いされてしまったけれど、バレなかったから許してやろう。これでお分かりいただけただろうか、うちの学園の伝説について。追加説明をしておくと、オト女神像をつくったのは、うちの部活の先輩。そして、女神様のふりしてみんなの願いを叶えているのが、俺たち『オトメ♡研究同好会』略してオト研という訳だ。
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