ゲームその2 『子ブタ村と目覚めるオオカミ』第5話
「ブーリン兄ちゃん、待ってよ、まだ全然わからないことだらけだよ。こんな状態でゲームしたって、負けるに決まってるだろ」
ウリリンがしかめっつらでブーリンに注意します。ブーリンはますます不満そうな顔でウリリンをにらみつけます。プリンがあわててワオンをうながしました。
「そ、それで、三種類の家は、それぞれどう違うんですか?」
「あぁ、それじゃあそれについても説明しよう。でも、その前にまずは、このゲームの勝ち負けについて話すね」
説明しようとするワオンに、ブーリンがにやっと笑って口をはさみました。
「勝ち負けなんてわかりきってるぜ。一番多く家を建てたやつが勝ちってことだろ?」
「うーん、惜しいかなぁ。正解でもあるし、ちょっと違うともいえるね」
ワオンの言葉に、ブーリンは目をぱちくりさせました。
「どういうことだ? あってるか、間違ってるか、どうしてはっきりしないんだ?」
「うん。なぜならこのゲームは、最初に『子ブタ村のプレイヤー』三人と、『オオカミプレイヤー』に分かれるんだけど、勝ち負けはまず、子ブタ村のプレイヤー側と、オオカミプレイヤーとで判定するんだ。もしここでオオカミプレイヤーが勝ったら、オオカミプレイヤーの独り勝ちになる。でも、子ブタ村のプレイヤー側が勝っていたら、今度はそこから、子ブタ村のプレイヤーで一番を決めるっていう流れなんだよ」
ワオンの説明を聞いて、ブーリンはちんぷんかんぷんといった表情でしたが、ウリリンはなるほどとうなずきました。
「つまり、おれたちはチームでまずはあんたと戦って、そのあと勝ったら、おれたちのなかで一番を決めるってことだな?」
「そうそう、そういうことだよ。それで、さっきブーリン君がいってくれたように、子ブタ村のプレイヤー側と、オオカミプレイヤーの勝ち負けを決めるときには、子ブタ村のプレイヤーの家の軒数が得点になる。でも、子ブタ村のプレイヤー同士で勝ち負けを決めるときは、作った家の点数が重要になってくるよ」
ワオンがウリリンの持っていた家トークンをつまみました。
「とはいっても点数は簡単で、わらの家は1点、木の家とレンガの家はどちらも2点だよ」
「なんだ、じゃあ木の家とレンガの家をバンバン建てれば、わしの勝ちってことだな」
またしても早口で答えて笑うブーリンでしたが、ワオンはすまなそうに首をふりました。
「だけど、残念ながらそうはならないんだよ。なぜなら、わらの家、木の家、レンガの家は、それぞれ建てるためにかかるターンが違うからね。わらの家は1ターン、木の家は2ターン、レンガの家は3ターンかかるよ」
「てことはこのゲームは、ターン制ってことだな。おれたち子ブタ村のプレイヤーと、オオカミプレイヤーとで交互にゲームを進めるのか?」
ウリリンの質問に、ワオンは口元をほころばせました。
「惜しいなぁ、そうでもあるし、そうじゃないともいえるよ」
「どういうことだ?」
油断なくワオンを見るウリリンに、ワオンも姿勢を正して説明を続けます。
「このゲーム、あるタイミングまでは、君たち子ブタ村のプレイヤーだけが行動できるんだ。オオカミプレイヤーはその間お休みさ。そう、目覚めていない状態なんだ。でも、あるタイミングで、オオカミプレイヤーは動き出す。……それこそがこのゲームの名前にもなっている、オオカミの目覚めなのさ」
そういって、ワオンは先ほどのゲームが入っていた箱から、手のひらに収まるくらいの大きさの時計を取り出しました。もちろん本物の時計ではなく、それはおもちゃの時計で、針を自由に指で動かせるようになっています。ウリリンがじっとその時計を見つめました。
「なんだ、その時計? 12時じゃなくて10時までしかないじゃないか。それに針も一つだけだし」
「そうさ。これもゲームの大事なコンポーネントさ。あ、コンポーネントってのは、ゲームで使うコマとかのことだよ。この時計の名前は、『目覚めを告げる時計』っていうんだ。オオカミが目覚めるまでの時間を表している。ゲームの簡単な流れを説明すると、まずは君たち子ブタ村のプレイヤーたちが先にターンを重ねていくんだ。オオカミが眠っている間に、家を建てていくってわけだね」
ワオンが目覚めを告げる時計の針を、くるくると指で回しました。
「だけど、建てる家は考えないといけないよ。そうしないと、この時計が10時を指したら、つまり、10ターンが経過したら、オオカミが目覚めてしまうんだ。つまり、おいら、オオカミプレイヤーのターンが回ってくるってことだよ」
「オオカミプレイヤーはなにをするんだ? 同じように家を建てるのか?」
ウリリンの言葉に、ワオンは首をふりました。
「いいや、オオカミプレイヤーは、家は建てないよ。オオカミプレイヤーができることは二つ。一つ目は、この『オオカミトークン』を森か山に配置することさ」
ワオンが箱から、ギザギザの牙をむき出しにした、恐ろしいオオカミのコマを取り出しました。三人がブゥッとおびえたように鳴きます。
「そしてもう一つは、フィールドに配置したオオカミトークンを移動させることだよ。そして、ここからが重要なんだけど、オオカミトークンが移動した先に家があったら、オオカミトークンはその家を壊すことができるんだ」
「ひぇっ!」
思わずブーリンが声をあげます。しかし、ウリリンは考え深げな目でワオンを見て、質問しました。
「どんな家でも壊せるのか?」
「ううん、違うよ。オオカミトークンが壊せるのは、わらの家か木の家だけだ。レンガの家は壊せないよ。ちなみにさっき、子ブタ村のプレイヤー側とオオカミプレイヤーとの勝ち負けは、家の軒数で決めるっていったけど、子ブタ村のプレイヤー側は、フィールドに残っている家の軒数が得点となるよ」
ワオンの説明を聞いて、ウリリンはなるほどとうなずきました。
「それじゃあオオカミトークンが壊した家は、カウントしないんだな」
「そうさ。あと、もう一つ大事なことがあって、君たち子ブタ村のプレイヤー側は、どの家も全部一軒が1点となるけど、おいら、つまりオオカミプレイヤーは、オオカミトークン1つが7点、そして壊した家1軒につき3点入るよ」
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