おおよそタイトル通りの筋の、猫を飼い始めたとある家族の物語。
猫が主軸の現代ドラマです。
すんごい綺麗な掌編。うっとりしてため息が出ちゃうくらい。なんかもう国語の教科書とかに載せちゃえばいいのにとか思いました。とっても良かった……。
ストーリーはタイトルの通りです。といっても猫は所詮猫、彼(彼女?)自身は何をするでもないのですけれど。
例えばこう、創作らしい「魔法みたいな奇跡のウルトラパワーで本当になんとかしちゃうご都合猫」もそれはそれで良いものですけれど、本作の猫さんは本当にただの猫で、そこが大変素敵でした。
そして、それなのに本当に上手くいくところも。
猫によって上手くいく、ということは逆説、元々は上手くいってなかったわけで、つまりは主人公一家がそれぞれに抱えた問題や葛藤の、そのあり方や関わり方がもう本当に好き。
いまのところは騙し騙しどうにかやれているけど、でも根本的には誰にもどうにもできない、何か仕方のない性質や業のようなもの。それらが決して解決するわけではなく、でもとりあえず「上手くいく」ところがもうものすごく心地いい!
ほっとしました。ともすれば諦観と妥協に収めてしまいがちな人生のいろいろを、でも綺麗にいい感じに収めてしまうことの安心感。
たぶん猫はなんにもしてないけど、でも確かに「猫によって」であることは間違いないと思えるこの感じ。
とても素敵な物語でした。面白かったです。