それは必然的で

第一話

 ・・・


 長谷川ハセガワ汐音シオネ。高校2年生。


 普通の女子高生、で居たかったけれど、どうも少し整った体で生まれてきてしまったようで。


 朝登校してくれば、正門から教室に入るまで、男子に群がられ。


 長谷川さんって美人なのに彼氏持ちじゃないって!

 しかもテストもいつもトップ!

 料理も何でもこなすらしいな!

 正に理想の彼女像だよな…


 故にそういうことらしい。


 登校してきて教室に入るまで、折角念入りにブローをしてきてもすぐに悲惨な状態になり、制服も擦れて他人よりテカリが激しい気がする。


 ブレザーの襟だっていつの間にか立っているし、リボンだって真正面に来ていない。

 スカートはプリーツが崩れ、靴下も半分ずり落ちている。


 酷い。流石にこれは酷い。


 中学もそれなりにモテたけれど(自分で言うのも気が引けるが)、高校に入ってこんな状況に陥るとは思いもしなかった。


 やっぱ生徒数の多い高校になんか入るんじゃなかった、とか考えても今更遅い。


 高校は思春期絶好調だ。


 そして最近リア充男子は少ないと聞く。

 そんなにリア充になりたいのか男子よ。



 最近は群がる男子も増加傾向にあって、本気で対策を考えている今日この頃だ。




 ・・・


 富谷トミヤ遥樹ハルキ。高校2年生。


 自分で言うのも気が引けるが、自分は少し整った体で生まれてきてしまったらしい。



 俺の朝は早起きから始まる。

 朝は5時半には起きて、支度をし、6時半に家を出て7時に学校に着く。


 そうでもしないと女子が群がって大変なことになるからだ。


 入学したての頃から俺は学校の注目の的だったらしく。(理由は言うまでもない。)

 十数回と女子の被害に遭った。


 被害には遭わずとも、囲まれるのは毎日のことだった(これも被害と言うのかも知れないが)。


 ブレザーのボタンはしょっちゅう千切られそうになり。

 何時の間にか靴が脱げているなんてこともあった。


 正直言えば、女子が嫌いという程でもない。

 ただ、人混みは苦手だ。大の苦手だ。


 故に、朝は早く起きて正門が開く前に学校に来るようにした。


 そうしたら案の定、女子の被害には遭わなかったし、人も居ないので開放感に溢れて登校することが出来て良いことずくめだった。



 そしてこの生活を続けて2ヶ月。

 未だに被害には遭わずに生活することが出来ている。




 ・・・


「汐音!おっはよーー!!」


 ニコニコとした笑顔でブンブンと手を振っているのは、紅葉(クレハ)だ。


「朝から相変わらず元気で良いこと…」


 どこからそんな元気が出てくるんだろうか。私の親友って奴は。


「まーた男子にぐちゃぐちゃにされたの? 汐音が好きならこんなことするなってんだ!」


「まあ、何時ものことだしさ…慣れたよ、いい加減」


「でもでもでも!うちの可愛い汐音に何かするなんて…もう、ぶっ飛ばしたる!!」


 威厳を見せつけようとしたのか、関西弁が少し混ざっている。


 ぶっ飛ばしたる、とか言う癖にいざとなると何も出来ないわよね。紅葉は。


「ほら、今可愛くお直ししてあげるからね?」


「じゃ、お願いね」


 そう言うと汐音はコームとエチケットブラシ、充電式のヘアアイロンを取り出し、そそくさと、まるでメイドの様に身嗜みを整え始めた。



 初めて私が紅葉にこう言われた時は、流石に断った。

 自分で出来ない範疇のことでもないのに、と。


 そうしたら、とてもとても直視出来ないような怖い形相で睨んで来るものだから。。。

 それからはされるがままになっている。


 後から聞けば、世話をしたり他人を弄ったりするのは好きらしい。

 だがやはり、何回されてもこれは慣れない。


 だって紅葉は何時もしないような真剣な顔で身嗜みを整えてくれているのだ。


 可愛いったらありゃしない。

(先に言っておくが、私に百合趣味などない。友達として、だ。)


 と言っても、紅葉を見れば女子でも可愛いっ!!と即答するに決まっているのだ。


 クリクリの目、睫毛はびっしりと生え際を沿って並んでいて、それでいてとてつもなく長い。

 肌は人形のように白く、スベスベしていて、頬にはほんのりと赤みがかかっている。

 スタイルだって申し分ない。

 ただ背は低い方だが。でも、男子にはそれくらいが丁度いいくらいの低さだ。


 やはり、可愛い。





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