ぼくとおじさん(変質者)

Taike

ぼく知ってるよ

 ぼくは健司。小学一年生。『留守番してなさい』っていうお母さんの言いつけを破ってお外に出たら迷子になっちゃった。困った困った、さあ大変。


 お外はお日様の光が眩しくて、とっても暑い。ゆーぶいこう?っていうのが、お肌に当たると良くないって先生が言ってた。まあ、僕は子供だからよく分かんないんだけどね。


「やあやあ! そこの少年! 私の話を聞いてはくれないかぁ?」


 夏の日差しっていうのは、人の頭も茹でさせるのかな? 道を歩いてたら、急に頭のおかしいおじちゃんが僕の前にあらわれた。


「おじちゃん、だあれ?」


 ──ていうか。


「なんでおじちゃんは女の人の下着を履いて、道路を歩いてるの?」


 おじちゃんは、なぜか上下ピンク色のランジェリーを着てた。一応コートは羽織ってるけど、中途半端に着てる分余計に気持ち悪いなぁ。


「ぼく、知ってるよ。おじちゃんみたいな人のこと、変質者っていうんだ。小学校で習った」


「ほっほう、私の心を傷つけながら知識を披露するとは、なかなかスマートなボーイじゃないか! よし、そんな君に私の話を聞かせてあげよう!!」


「わかった。ほんとは聞きたくないけど、暇つぶしに聞いてあげるね?」


「ンン!! ベリー辛辣!!」


 ぼくはこんな大人にならないように、後学のためにおじちゃんの話を聞いてあげることにした。ぼく知ってるよ。反面教師っていうんだ。


「それで、お話って何?」


「イエス! 私の話というのはだね! 今私が着用している、この『UVカットランジェリー』についてさっっ!!」


「聞くからに頭が悪い名前だねぇ」


「頭が悪い? むしろ逆さぁ!! なんせ、このUVカットランジェリーは、下着で街を出歩いても日焼けしないんだからねぇ!!」


 勢いがすごい。まるで崖っぷちのお笑い芸人さんみたいだ。


「下着で街を出歩くのは、こーぜんわいせつ罪なんだよ? UVをカットできても、職を失っておじちゃんのお給料もカットされちゃうよう」


「ノープロブレム・ノージョブ! 心配するな、ボーイ! 私に失う職はない!!」


「その年でニートなのは余計心配だよう」


 なんだか話すの飽きてきちゃった。そろそろおじちゃんを巻いて、お母さんに電話して迎えにきてもらおうかな。


「バイバイ、おじちゃん。ありがとう。おじちゃんみたいにならないように、ぼく頑張るね」


「ヘイヘイ、唐突なグッバイは良くないぜボーイ!! せめて最後に、この『UVカットランジェリー』の効能を見てくれい!!」


 するとおじちゃんは、ブラをペロっとめくって、同時にペロっと舌を出してきた。うわぁ。筆舌に尽くしがたいくらい、気持ちわるいよぉ。


「ていうか、全然UVカットできてないじゃん」


 しかも、ブラの下にあったはずのおじちゃんの胸はこんがり茶色に焼けてた。


 これじゃあただ下着を履いてただけの、変質者ニートおっさんだよぉ。

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ぼくとおじさん(変質者) Taike @Taikee

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