第198話 神魔大戦 ~シルヴィス無双……しかし①~
シルヴィス達は次々と現れる天軍達へ攻撃を繰り返すことで陣容が整うのを邪魔し続けていた。
シルヴィス達の行動は非常にいやらしいもので、まず突撃し、
通常の軍であれば兵士の士気が下げることに意味はあるのだが、天軍にはそれは当てはまらない。
そのためにシルヴィス達は天使や神を積極的に狙うようになっている。
神達からすれば油断すればシルヴィス達の分身体に討たれるし、追い詰めれば自爆により損害が出るという勝っても負けても天軍に被害が生じていくのだ。
だが、天軍もそれに対応できないわけではない。損害が生じた軍は即座に部隊の再編成を行い生じた損害が埋められていく。
そして、二度も同じ手段では損害を与えることはできないのだ。
「う〜ん……初見の軍に対してはうまくいくけど、二回も同じ手は通じないな」
「そうですね。相手の指揮官は本当に優秀です!!すぐに上手く対応するから同じ軍には手を出せませんし、その間に陣容が整えられてしまいます」
「確かにそうだな……予定を変えないといけないな」
「そうですねぇここまで天軍の実力が高いとは完全に読み違えましたね。どうします?」
「もうすぐムルバイズさん達が門を開くけどこのままじゃあすぐに各個撃破されてしまうな。……仕方ない。俺が直接やる。ヴェルティア達はこのまま分身体で俺の支援をしてくれ」
「支援ですか!? 任せてください!! この私がおっちょこちょいなシルヴィスのために支援しましょう!!」
シルヴィスからの支援の申し出にヴェルティアがやけに食いついた。その顔はみょうにやる気に満ちたものである。
「まさかお前におっちょこちょいとか言われる日が来るとは思わなんだ」
「ふふ、想定が甘いですねぇ〜私はシルヴィスの将来が心配です」
「お前は何目線なんだよ……」
シルヴィスの言葉にディアーネとユリがすかさずニヤニヤしながら言う。
「それは……ねぇ?」
「だよねぇ?」
二人の会話をシルヴィスは聞かなかったコトにして、シルヴィスは転移するとエランスギオムへと姿を見せた。
「さて……すでに五軍がエランスギオムへと姿を見せている。そして二軍は俺たちが与えた損害をすでに修復済み……と。最初の予定通りとは本当に行かないな。実際には想定外のことが起こるのは理解してたが、まさか最初の段階でいきなり予定が狂うなんてなぁ……ま、さすがは神様ということにしとくか」
シルヴィスの声にぼやくような響きがあるのは、シュレンの手腕に対しての賞賛の裏返しである。
「よし……やるか」
シルヴィスは気合を入れると同時に両腕に黒と赤の紋様が浮かび上がった。
「……シオルか」
シルヴィスが紋様を発動させると同時にシオルが自分に凄まじいばかりの威圧感を放っているのを感じた。
「まぁ、今は陣容が整うのを邪魔するのが先だ」
シルヴィスはそういうと天軍の上空に巨大な魔法陣を顕現させた。上空の魔法陣から巨大な質量を持った巨岩が現れ、落下してきた。シルヴィスの対城砦用魔術である
「な、なんだ……あれは!!」
「た、退避!!」
「避けろ!!」
突如自分達の上空に魔法陣が描かれ、間髪入れずに巨岩が落ちてこようとしていることに、当然ながらジービルス将軍指揮下の第二軍団は大混乱に陥った。
個人であれば即動くことができたかもしれない。だが、集団行動、しかも陣容を整えている最中であり、この奇襲に対処することなどそうそうできるものではない。
ズズゥゥゥゥゥゥゥン!!
放たれた岩禅は容赦なく第二軍団へ直撃した。
「な、何だ……」
「だ、第二軍団が……」
「ディガーム将軍は……無事なのか?」
「わかるわけないだろう!!」
「ま、魔族は……あんな術を使えるのか?」
第二軍団を押し潰した岩禅を見た他軍団の天使や神達の間から動揺の声が上がった。あれほどの質量の巨石を召喚して落とすなど、一体どれほどの魔力を必要とするのか。動揺するなという方が無理であろう。
「よし!! いくぞ!!」
シルヴィスはヴェルティア達に声をかけると一度分身体で襲撃したルーウィク将軍の指揮する第四軍団へと猛然と襲い掛かる。シルヴィスは駆けながら
第四軍団は突っ込んでくるシルヴィス達を
槍衾が形成されたが、シルヴィス達の速度は一切落ちない。ここまでであれば先ほどの分身体と同じである。しかし、先ほどまでの分身体と違うのは槍衾の壊し方である、分身体の場合は相手の虚を衝きそこから打ち下したのであるが、今度のシルヴィスは真正面から
シルヴィスのしたことは単純である。突き放たれた槍の穂先を拳で撃ち抜いただけである。魔力を込めて力任せに殴りつけただけであるが、その効果は絶大だっが。放たれた拳圧の直撃を受けた最前列の
シルヴィス達はそのまま空いた穴から第四軍団への中に入ると凄まじいばかりの武力を容赦なく振るった。
シルヴィスの力の奔流は第四軍団の内部で荒れ狂った。
それは先ほどの知と理により出血を強いるものではなく純粋な力による蹂躙であった。その暴威は
(強引なのは百も承知だが、現状を覆すには力押ししかないな)
シルヴィスは第四軍団をその圧倒的な武力により蹂躙しているが、それはシルヴィスにとって取らざるを得ないということであり、爽快な気分というわけではない。
「おのれぇぇ!! 下等生物が!! 神に逆らうなどゆるさ……」
神がシルヴィスへ怒りの感情を叩きつけた。しかし、シルヴィスの対応は
「神と天使を狙わないとな」
シルヴィスの口から無慈悲極まる言葉が発せられた。シルヴィスの発言を耳にてしまった天使達は恐怖ために顔を引き攣らせた。
たった今、自分達の上位者である神が何の抵抗もできずにシルヴィスの斬撃により首を斬り飛ばされたのだから当然であろう。
「ひっ!!」
シルヴィスと目のあった天使があからさまに恐怖の叫びをあげた。天使であるという自負は確かにあるが、その自負を遥かにシルヴィスへの恐怖は凌駕しているのである。
そして、その恐怖が正しかったことはそのすぐ後に証明された。シルヴィスの拳が天使の顔面に叩きつけられ吹き飛ぶと天使はピクピクと数度痙攣して動かなくなった。
「準備ができたか……もう少し暴れるとするか」
シルヴィスはムルバイズ達が門を形成し終えた事に力強く頷いた。
「シルヴィス……この軍を相手にどこまでやるんですか?」
「そうだな。もう少しだ。次はあっちだ」
「岩禅はどうして使わないんですか?」
「こいつらは決して無能じゃない。二回も同じ手に引っかかるとは思えん。下手したら魔軍に損害が出るかもしれない」
「なるほど!! それもそうですね」
シルヴィスの答えにヴェルティアは納得の返答を示す。
シュン……
その時、一つの斬撃が放たれ、ヴェルティアの右腕が両断された。
「あらら……やられてしまいましたね」
「お前、あそこまで自信たっぷりだったってのにあっさりやられるなよ。まぁ、相手が相手だ。仕方ないけどな」
「う〜面目ないです」
ヴェルティアが珍しく殊勝げな声を出した。
「一つ……聞きたいことがある」
ヴェルティアの分身体の右腕を両断した神が静かに歩いてきた。
その神はもちろんシオルである。
「シルヴィス……お前の父の話を聞きたい。お前の父親は人間か?」
シオルの問いかけの声は静かであった。
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