第183話 神魔大戦前夜④
不死身の男を拷問が失敗したシルヴィス達は
レンヤ達はシルヴィスには遠く及ばないが、それでも魔族の中でも上位に入るほどの実力を有しているのは間違いないのだ。
シルヴィスからことの顛末を聞かされたレンヤ達は顔を強張らせた。
「それでは
レンヤの声に流石に動揺が見える。自分の中にいわば爆弾が埋め込まれているようなものであり、動揺するなというのも無理な話である。
「そこなんだ。ディアンリアから能力を取り上げられた男は死んだけど、それは不死の能力がなくなった事で俺たちの与えたダメージで死んだのが原因かもしれない」
「……」
シルヴィスの言葉にレンヤ達三人は顔を見合わせた。確かにシルヴィスの情報では
「シルヴィスさん……
レンヤが意を結したように言うとシルヴィスは苦い顔をした。
「やれないことはない……だが、それによりお前の命が失われるかもしれん」
「一つ質問ですが、シルヴィスさんはディアンリアを助ける意思はありますか?」
「ない」
シルヴィスの即答にレンヤ達三人は納得の表情を浮かべた。シルヴィスの行動原理においてディアンリアは最も許せない存在であることを三人は理解しているのだ。
「それはつまりディアンリアを殺すと言うこと……もし、ディアンリアの死によって
「その論法は少しばかり乱暴のような気もするぞ」
「ええ、しかしそれはただの前提条件です。この戦いが終わった時に
「ふむ……」
レンヤの言葉にシルヴィスが悩む。シルヴィスはディアンリアが突然
「レンヤ……まずは俺が受けようと思う。こういうのは年長者の仕事だ」
ヴィルガルドの意見にレンヤは静かに首を横に振る。
「いや、ここは俺にやらせてくれ。言い出したのは俺だ」
「そういうわけにはいかん」
レンヤもヴィルガルドも一歩も引くつもりはないようである。
「それじゃあ、間をとって私が行くわ」
『ダメに決まってるだろ!!』
そこにエルナがいうと二人は声をそろえて却下する。この辺りの息の合い方はさすがというべきだろう。
「レンヤ、お前で試す。ヴィルガルド、もし俺が失敗したらお前は俺の首を刎ねろ」
シルヴィスの言葉にレンヤもヴィルガルドも絶句した。シルヴィスの提案はさすがに度が過ぎているという感想を誰しも持ったのだ。
「そ、それはいけません!!」
「そ、そうだよ!! いくら何でもそれは……おい、ヴィルガルド!! シルヴィス様が失敗したら首を刎ねるのは私の方にしろ!!」
ディアーネとユリがシルヴィスの提案に即座に反対を示すが、ヴェルティアが手で二人を制した。その様子を見ていたレティシア達も反論の言葉を発することができない。
「二人とも何を心配しているんです!! シルヴィスが命をかけると言ったのですから大丈夫です!!」
「え?」
「シルヴィスが勝算もなしに命をかけるようなことはあり得ません!! 私達が見えてない勝算があるんですよ!! ささっ!! シルヴィスちゃっちゃとレンヤさん達の
ヴェルティアの言葉にシルヴィスは苦笑を浮かべると両腕に紋様が浮かんだ。
「いくぞレンヤ」
「はい!!」
シルヴィスの力を込めた声にレンヤは即答する。シルヴィスはレンヤの返答を聞くと右手をレンヤの心臓の位置に当てるとズブズブとシルヴィスの体の中に右手が入り込んでいく。
ズボッ!!
レンヤの体から引き抜かれたシルヴィスの右手に七色に光る珠が握られていた。シルヴィスはレンヤの様子をじっと見つつ問いかけた。
「どうだ?」
シルヴィスの問いかけにレンヤは色々と体のあちこちを見るが何も異常を見つけることができないようであった。
「何ともないです……ね」
「そうか」
シルヴィスはどことなくホッとした様子を見せた時に手にした七色の珠がチリとなって消滅した。
「さて、それじゃあ。二人ともやっておこうか」
「はい」
「お願いします」
そこからシルヴィスはヴィルガルド、エルナの体内から
「う〜ん……三人の実力がどう変化したかを確認しておいてもらいたいのですけど、ディアーネさん、ユリさん頼めますか?」
「わかりました」
「わかりました。三人とも行くよ」
『はい』
ディアーネとユリにレンヤ達三人は着いていく。
「上手くいったな」
「そうですねぇ〜うんうん。結果が良ければそれで良いのです!!」
「しかし、お前よく『行け!!』と言ったな」
「まぁ、シルヴィスならなんか手を打ったことでしょうから大丈夫だと思ったんですよ。ちなみにどんな手段だったんですか?」
「ああ、擬似的な
「なるほど……」
「お前よくわかってないだろ?」
「さぁ!! 三人の模擬戦を見に行くことにしましょう!!」
ヴェルティアはやけに大きな声でシルヴィスの手をとりレンヤ達の模擬戦を見にいった。
「すごいですね」
ヴィリスがレティシアへ先ほどのシルヴィスとヴェルティアのやりとりの感想を言う。
「そうね。びっくりするくらいお姉様はお
レティシアの声にもヴィリス同様に感嘆の響きがあった。
「はい。未知の出来事……おそらくシルヴィス様は上手く行く可能性は半々と見ていたと思います。それに躊躇いもなく命をかける発言……いかに対策を用意していたとはいえ、それでも失敗の可能性を考慮すれば躊躇します」
「ええ、お義兄様の技量に裏付けされたものでしょうね……そして、自分で責任を取るという覚悟ね」
「はい。ヴェルティア様はシルヴィス様の底を信頼されたということでしょうか?」
「かもしれないわね……もしくは惚れた弱みというものかもね」
レティシアはそう言ってクスリと笑う。
「それを言うならシルヴィス様もじゃないですか? ヴェルティア様の声に妙に力が入ってましたよ」
「もう、完全に両想いよね」
「はい」
レティシアとヴィリスはそう言って互いに笑った。
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