第02話 プロローグ②
ドゴォォォォォ!!
「よし!!」
男は巨石が見事にヴェルティア直撃したのを見て男が小さく拳を握る。
「ま、この程度じゃ死なんだろうが、少しはダメージを与えれたかな」
男の口調はヴェルティアとの勝負が決したものでないことを示すものだった。男にしてみればヴェルティアの頑強さを理解しているため、この程度では死なないという確信があったのだ。
『なにが"よし"ですかぁぁぁぁぁ!!』
ゴガガガガガガガガガガガガガガア!!
巨石を拳で掘り抜いてヴェルティアが姿を現した。あまりに予想外の登場に男はさすがに唖然とした表情を浮かべていた。
「
「そんなわけないでしょう!! オリハルコンで出来ている生物なんかいるわけないでしょう!!」
「岩禅は城を破壊するための術なんだよ。お前なんで無傷なの?」
「無傷なわけないでしょう!! こぶが出来ましたよ」
ヴェルティアは頭頂部をさすりながら言う。
「こぶって……」
「まったく。私のような類い希な美少女だから死にませんでしたが、他の方なら潰れてましたよ」
「いや……美少女は関係ないだろ」
「汚物君って本当に無礼な人ですね」
「誰が汚物君だ!!俺の名はシルヴィスだ!!」
「あ、そうなんですか? 汚物君じゃないんですね」
「勝手に俺の名前を汚物君にするな」
シルヴィスの抗議にヴェルティアはやれやれという表情を浮かべると静かに頭を下げた。
「もう、そんなに怒らないでくださいよ。シルヴィスって良い名前じゃないですか。気にしないでくださいよ」
「そのくだりは俺がやったろうが!!」
「ま、いいじゃないですか」
シルヴィスの抗議をヴェルティアは何でもないと言わんばかりの態度で返した。
(しかし、態度はふざけてるが、こいつは強い。さてどうするか……)
シルヴィスは意識の全てをヴェルティアに集中した。ヴェルティアも減らず口をたたいているがシルヴィス同様に意識を向けている。
(来るか?)
ヴェルティアの攻撃の意思を感じ取り、即座に対応しようとすると攻撃の意思がふっと消える。
すると今度はシルヴィスが仕掛ける。
ヴェルティアもまたシルヴィスの攻撃の意思を察すると、次の瞬間にはヴェルティアは対応しようとする。
(ち……ダメか)
シルヴィスは即座に対応をとられたことにより、その一手を中止する。
(むぅ……ダメですね。私が攻めあぐねるなんてね)
ヴェルティアも動けないでいた。
両者はまったく動かない。しかし、両者は意識を放ちながら打ち合っていた。
両者の額から汗がにじみ出す。二人は動いてはいない。しかし、ごっそりと精神力が削られていってるのは間違いなかった。
一瞬、いや半瞬であっても意識を切った瞬間に押し切られるのが分かっているために、二人は全ての意識を互いに向けていた。
(本当に気配を消すのが上手いですね。
ヴェルティアがそう考えた。その時であった……。
シルヴィスが光に包まれ、次の瞬間には姿がかき消えていた。
「へ?」
ヴェルティアの口から呆けた声が発せられた。
シルヴィスの姿だけでなく気配まで完全に消えていたのだ。
「ちょっと!! これからというときに何逃げてんですかぁぁぁぁ!!」
ヴェルティアの絶叫が響き渡った。ヴェルティアにしてみれば今まで鎬を削って、さぁこれから動き出そうとしたところにお預けを食らったようなものなのだろう。
とても納得の出来るものではない。
「逃げられるとでも思っているんですか!! 逃がしませんよ!!」
ヴェルティアはシルヴィスの消えた気配を探し始めた。
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