ワンピース

カイチ

Ep.1 フジワラという男

この物語を旧友であるA.Yに捧ぐ。


「2025年7月30日、本日の最高気温は54度、熱中症の心配がありますので皆様には家から出ないことを強く推奨したいところですね…」

黒く焦げた食パンを頬張りつつテレビに目を向ける。最近某SNSでハメ〇りが流出したと噂になっていた女アナウンサー、お前は自分の心配をしろよ、と思わず心の中でtweetする。

これで20日連続超夏日。

そろそろ国外のどこか涼しいところに移住するという綿密な計画を立てていきたいところではあるが、今日は勝負の日。そんな時間的余裕はない。

朝食を食べ終え、着替えを済ませ、ふとテレビに目を向けると、CMが流れているところであった。

「テレッテッテッテー!本日発売!5着限定マクダナルドとタケモトピアニカのコラボワンピース!ピアニカ売ってちょ〜だい!」

超大手ハンバーガーチェーンと謎につつまれたピアニカ回収会社がタッグを組んで発売するワンピース。その話題性から某SNSにおいては発売発表時から常にトレンド上位を独占しており、それはあのアナウンサーのハメ〇りの噂を風化させる勢いであった。

これはあのアナウンサーが自身の痴態を人々の記憶から風化させるために流した嘘のコラボ情報なのではないか、と俺がtweetしたところ、1.1万いいねがついたこともまた記憶に新しい。が、このコラボは現実のものであり、実際に今日2025年7月30日にそれは発売されようとしていた。

ピロン。手に持っていたスマートフォンに目をやると、そこには新着メッセージが表示されていた。

【おはよっす〜フジワラくん〜

今日はもちろん"アレ"買いにいくんすよね?】

それは某SNSで知り合った友人ナミグチからだった。俺はネット上の友人は作らない主義なのだが、ナミグチとは彼女からの好意に押される形で連絡先の交換から日々のメッセージのやり取りまで行っていた。毎朝送られてくるおはようメッセージに、毎晩送られてくるおやすみメッセージ。なかなかめんどくさいやつに好かれてしまったな、と思いながらも実のところメッセージが来る度に興奮していた。

タタンタッタタタタンタン…!!

【ちょうど今家を出るところや】

スマートフォンの画面をリズミカルにタップし関西風味を効かせた短文をキメる。

「待っていろよ、ワンピース。」

そう呟きながら火元を確認、よしOK。

靴を履き、扉を開ける。

「!?」

一瞬、ほんの刹那、腹部に走った違和感。

嫌な予感がしたが、フジワラは腹を壊さない子として地元の町内会では有名だった過去を持つ男。

「最後に腹を壊したのはいつだ?落ち着くんだ俺ェ…。」

そう呟きながら扉に鍵をかけ、駐輪場に止めてあった愛車『ミリオンサニー号』に股がる。

「先着王に俺はなる…!!」

一心不乱に足を回転させマンションを後にしたフジワラであった。

が、この時彼は知る由もなかった。

これから彼の身に降りかかる悲劇を…。



To Be Continued...


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る