残念男子今日は一味違う

 今日の放課後、佐々木は告白された。

 突然の出来事に驚いているが嘘ではない事実である。


 そんな変わった…勇気ある女子はかっこいい系の女子だ。

 涙を流すことなくスッキリした顔で彼女は笑った。


「好きな人がいるのは分かってるけど諦められなくて…ごめん」


 佐々木は目を丸くして彼女を見ている。

 どうして自身好意を持つ人がいるとは思っていなかったらしい。


「あの…ごめんなさい」

「君が謝ることないじゃん、私の自己満足で告白したんだから」

「…でも俺の事を好きだって思ってくれたのは事実だからしっかり気持ちを聞いたうえで断りたい」


 佐々木はこういうときはイケメンだったしっかりできる男だった。

 藤波関係はポンコツなくせにこういう時はかっこいい。


「…良いなぁ藤波さん。君に好かれてて」

「俺が一方的に思ってるだけだけどね」


 佐々木は苦笑いをして笑う。


「藤波さんと友達になれたのは良いけど、そこから先にいけないんだよね」

「それは…頑張ってね」

「ありがとう、ごめんね気持ちに応えてあげられなくて」

「良いって、良いって!じゃ私部活行ってくる!」


 そう言って彼女は足早に去って行った。

 嵐のような時間だった。


 佐々木は教室に戻って荷物を取りに行くために歩き出す。

 学校に入ると生徒はもういないほとんどは部活に行くか帰宅している。


「あれ?」


 教室に戻ると佐々木の思い人である藤波がいた。


「藤波さん帰ってなかったんだ」

「うん」

「何かあった?」

「…えっとその…佐々木くんのこと待っていたと言いますか…」

「えっ」


 佐々木は固まった。

 たった一つ藤波が自分の事を待っていたということで佐々木の頭は考えることをやめた。


「佐々木くん…?」

「アッ、アリガトウゴザイマス」


 彼は日本語を忘れてしまったのでしょうか。

 かろうじて話せてはいる。


「佐々木くん私分からないことがあってね」

「えっと俺で良ければ協力するよ」

「恋愛って…誰かを好きになる気持ちってどういうものなのかな」

「ブッ?!」


 やめろ佐々木、汚い噴き出すな。


「…どうして急に?」

「えーっと、佐々木くんを見ていて気になったんだよね、好きになるってどういうことなのか」

「へ、へぇー…」


 佐々木はどう伝えればいいか考える。


「例えば藤波さんはその…一緒にいる人を誰かに取られるとか…うーん上手く説明できない…」


 佐々木の言葉に藤波は頷いて何か分かったかのような顔をした。


「分かったかもそいう事なんだ…私はじゃあ」

「え?どういうこと?」

「?佐々木くんが好きだって話」

「へ?」


 は?どういうことか分からない。

 そこから藤波が佐々木のことを好きという結論に至った経緯を教えて欲しい。


「私ね佐々木くんが今日誰かに呼ばれてる時にここのあたりがモヤってしたんだよ」


 藤波は胸のあたりを押さえて言う。


「それで考えてて佐々木くんに聞きたくて待ってたんだよ」

「嘘…」

「嘘じゃないよ、知ってるでしょ、私の事を一番好きな君はどういう人かって知ってるんじゃないかな」


 佐々木は知っている彼女の性格を嘘がつけない優しい女の子であるということを。

 佐々木はそんな彼女だから好きになった。


「うん…知ってるだって俺は藤波さんのそういうところが好きだから」

「佐々木くんって時々恥ずかしいこと言うよね」

「そうかな」

「うん私今結構恥ずかしくて倒れそうになってる」


 顔色ひとつ変えずに発言しているせいか嘘に聞こえるが、手がプルプルしているので本当なのだろう。


「じゃあ俺から告白しても良いですか」

「どうぞ私も良いですか」

「ダメっ!嬉しくて恥ずかしくて死んじゃう」

「死なないでよ…死んだら好きな人がいなくなって私も後追いしちゃうかも?」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る