隣の藤波さんに今日も恋をする

赤猫

好き…藤波さん…しゅき

 はぁ…今日も好き。

 藤波紗江ふじなみさえさんは今日も俺が発狂しそうなくらい可愛い。


「おい!話を聞いているのか!佐々木修哉ささきしゅうや!」

「先生!俺は全力で藤波さんを見てるんです!生きがいを取らないでください!」

「今は授業中だぞ!」

「知ってますよ?何言ってるんですか?」

「急に素に戻るの何なのお前…?」


 取られてなるものか俺の生きがいをと言わんばかりの顔で言うせいで誰も止められない目力が強い怖いその目やめろ。

 誰か止めてくれ授業が全く進まないし、先生が若干涙目だかわいそうに。


「あの…」

「どうしたの藤波さん?!」


 聞き逃す訳にはいかないと思っているのか佐々木は近づく。


「授業中なので、静かに」

「します!」


 鶴の一声ならぬ藤波の一声だ。


「ありがとう藤波…!」


 先生は歓喜する。これがいつもの光景になりつつあるのが3年A組の日常である。

 一時期佐々木を窓際に藤波を出入口側にと席をすごく離した時期がある。

 その時の佐々木はストーカだと間違われるほどにひどかった。

 まず佐々木の席には望遠鏡が置いてある。

 それで授業中は藤波を見ているのだ。

 先生はもうどうしようも無くて止められないのでそのまま放置することを選んだ。

 そして次の席替えで先生は佐々木の席を藤波に謝って近くにしてもらった。


 彼の友人は一度なぜ望遠鏡を持ってきているのかと。

 その時佐々木はこう返した。


「馬鹿野郎!藤波さんを裸眼で見たら尊さで目が耐えられなくて潰れたらどうすんだ!」

「潰れねぇよ馬鹿?!」

「尊さで限界超えた俺を舐めるなよ?」

「なんでお前はそうも自信満々に言うんだよ?!」


 友人も驚くほどの変人っぷり。

 クラスの人たちもこんなにやばい奴だとは思わなかった。

 入学式の時は顔が良いし性格もフレンドリーで普通だったはずだが。


「あの…これ落としましたよ」

「ありがとう」


 藤波が佐々木のハンカチを拾ったのが、二人の出会い。

 良くある少女漫画みたいなやつだと思う。

 すごい良い雰囲気。顔が良いので絵になる。


「だ、大丈夫ですか?!」


 藤波の驚きを混じった声に周りは二人に注目する。

 見ると、プルプルと肩を震わせている佐々木がいる。


「…だ」

「はい?」

「…天使だ」

「は?」


 藤波は困惑した様子だ。


「あ、ごめんなさい!突然変な事言っちゃって」

「は、はぁ?」


 見ず知らずの男に言われたらそうなるのも無理はない。


「あの!あなたが好きです!」

「ええ…」

「藤波さんごめんねこいつ馬鹿だから」

「やめろ!俺に対しての藤波さんの印象が悪くなる」

「大丈夫だぞお前の印象はやばい奴だから。ごめんねこいつ連れて行くから」

「やーめーろ!」


 楠楓くすのきかえでが佐々木を引きずる。


「楓何するんだよ!」

「うるさい黙れ口を閉じろ大馬鹿!」


 佐々木と楠の叫びが学校内に響く。

 そして学校内で佐々木は残念イケメンとギャル系の女子に命名されていたそうな。












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