第1話:会議室に行く、俺とメリールさん

ガチャー!

重厚な音と共に、その門へと右手を添えたメリールは何かを小声で呪文を唱えたら、すぐに開いた。

そこを二人で潜ろうとすれば、目の前には豪華で感嘆たる大きさの屋敷がそこの奥に佇んでいる。


どうやらそれは三つまでの棟で分けられていて、左右の棟が一番長いらしくて、そして全体が4階建ての巨大なマンションみたいで左端から右端へと測ってみればたぶん、全長は130メートルに近い長さも持っているようだ。それぞれの左右の別棟に向かうには長い屋根のついた通り間があり、そこからは外へと覗けるための大きな窓が6本までも揃えられているようだ。


正面にある本棟は屋根のすぐ下には時計台があって、別棟それぞれにはそれよりもっと高い塔みたいなのがついているようだ。


そこへと辿り着く前にはとっても長い一本道があって、よく舗装され整えられて殆ど凹凸や乱れが生じてない綺麗のままの通り道だ。それ以外の左右側には目に眩しいくらいの整った緑の自然な絨毯である草木がどこまでも広がっており、広大な公園みたいな印象を客人に与えるような役割も果たしているようだ。


これはこれは参ったね。俺だって母さんの保有している二つまでの屋敷に住んでいたことがあるんだが、それとこれとを比べるにはまったく申し訳ないぐらい天と地の違いがあると実感させられた....。


とにかく、母さんの持つ屋敷よりも、ここの方が4倍、いや、5倍ほどもっとデカイぞ、これ!


「それにしても、綺麗なデザインの豪邸ですね、ここって」

高揚している気分を抑えつつ素直に思ったままの感想を口にすると、


「そうでしょう?わたくしも夫も好きなんですよね。フレドリーヒー公爵は軍のメルトクリアー王国軍の(4人の紅獅子将軍)の一人でもあるから、これほどのレベルの私物を保持してらっしゃるのに頷けるお話なんでしょう?」

「はは...。そうですね。いささか豪華すぎると思わないでもないけど....。」


そう。確かに上流な貴族家ならこれほどの物件を持つこと自体、何も不思議な話じゃないかもしれないけど、なんか王族だけ保持していいような物件なので少しだけ妙な気分になるというか、王様や彼の親戚に悪いというか...。


俺たち二人が並んでこの一本道を真っ直ぐへとあそこの玄関へと歩いていくところで、

「しかし、まさかあの彼の有名な(若き発明家の女才)であるエリザーベッス子爵がカリームさんみたいな天才肌な殿方を養子にして、そこまでの一流な実力者や魔術師に育ててきたことになるだなんて、すご過ぎますね。」

と、いきなり俺の母さんのことも話題に持ち出してきたのだけれど、それに対して俺は、


「母さんは有名な人ですからね。この国じゃ母さんのことを知らない者なんていないんじゃないかなって思いますよね?」

「ふふふ...そうとも言えますね。ニュースは魔法ボールや各町に設置されている(放送用の魔導映像塔)によって拡散されてきたので、余程の田舎者や洞窟とか過疎化した山奥に住んでいるような仙人じゃなければ、エリザーベッス子爵をご存知ない方なんていないと思いますね。」


それもそうか。俺の母さん、エリザーベッス・フォン・クライブは実は元々はただの庶民の出で、産まれた瞬間からは生粋な貴族家な娘ではなかったんだ。

でも、生まれた時からは母さんが徐徐に育っていくのにつれて、他の子供みたいには異なる何か異様な頭脳成長速度を見せていたそうだ。


読解力、分析力、数学力やそれ関連の全般の知識や教育分野において、母さんが小等学院に入った頃には既に母さんの右に出る同年代の子はいなかった。

他の子供より優れているその才能や知識の吸収力は後に母さんをあれほどの有名な(若き発明家の女才)と通称されるまでに至らせたのだ。


そう。母さんが11歳からの頃に次々と革命的な発明品を無から作り出してきて、それでたくさんの特許の発行で大儲けしたとか。

映像つきの通信用の魔法ボールやアンドルウェイー(放送用の巨大画面の魔導映像塔)や様々な魔道具だって、母さんの発明で作られていたようなものばかりだし、(若き発明家の女才)という呼び名をつけられるのも納得できるほどの偉業を成し遂げてきた!なので、その国の利益になるような膨大な功績により、母さんは若い16歳の年齢で子爵級な爵位を王様から授けられ、王国もっとも最若の年齢で爵位を与えられたと新たな歴史的な記録を残せた。

さすがは我が偉大なる母さんだ!えへへへ....


「ところで、さっきは貴方が(アルウェーンヌ)発動中のわたくしの姿がそこで立っていたのを見抜いていたんですよね?それでも驚いた振りをしていて何のつもりなんです?とぼけないでくださいよ、「漆黒の不敗豪男」さん。」

と、脳内で自分の母さんについての称賛に夢中だった俺に、いきなりそんなことを言ってきたメリール。


あはは....

さすがには誤魔化せなかったんだったかな、俺の素人も同然の演技で。


というか、今は会議が本題に移る前に早く席につかなければならないし、こんなのんびりで話し合ってていいの、メリールさん!?


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漆黒の不敗豪男の英雄譚 明武士 @akiratake2

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