自由縛り

シヨゥ

第1話

 自由に縛られている。そんな反するような意味を持つふたつの言葉でぼくの状況は説明できるだろう。

 なにをやったら良いのかまったく見当がつかない。

 昨日までは『あれをしなさい』、『これをしなさい』と指示を受けて頑張ってきたのだ。それが、

「これで独り立ちだな。もう自由にやっていいぞ」

 そんな試用期間終了の言葉でぼくはひどく混乱することになる。


 とりあえず混乱していないで仕事をしなければならない。

 やれることはなんだろうか。深呼吸をしてこれまでの研修期間を振り返ってみる。するとできることは限られることに気づく。それだけで無限の荒野のようだった自由の幅がぐっと狭まった。

 その自由の中でこの会社に足りていないことはなにか。そんなことを考えると自由の幅はさらに狭まる。

 それでもまだ広い。新人のぼくがやれることは少ないはずなのにまだまだ自由すぎる。だからもう一度考えてみる。どうせなら得意なことを活かしたい。そんな考えに至るとぼくのするべき仕事は明快になった。


 試用期間を終えて3ヶ月。戦力としてはまだ未熟だ。しかし得意を活かしてそこそこの活躍ができていた。これは自由に縛られたからこその結果だろう。

 そんなぼくは未だに自由に仕事をさせてもらっている。つまり今もまだ自由に縛られているのだ。そんな今の状況が好きだ。よくよく考えれば縛りがあるほう燃えるのだ。だから毎日が楽しい。そんな楽しい毎日を末永く続けていけたらと切に願うのだった。

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自由縛り シヨゥ @Shiyoxu

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