オンライン生活
OKAKI
第1話
世界が変わってから、もう何年が過ぎただろう。
多くのことがオンラインで済ませられるようになった現在。俺は4年付き合った彼女に浮気されたショックから、衝動的に離島に引っ越した。当初は戸惑うことも多かったけど、穏やかでのんびりとした空気は、俺に合っていた。
『えー! オンライン旅行って、つまんなくないですか?』
「そんなことないよ。世界中どこにでも行けるし」
『でもー、近くで見たくないですか?』
「まあね……」
『それにー、触ることも出来ないしー』
「むやみに触っちゃっいけない場合も……」
『それにー、旅行の楽しみってー、おいしいご飯でしょ?』
「でも、大概の物は取り寄せ出来るし……」
『現地の空気ってー、そこに行かないと味わえないっていうかー』
「そうね……」
『ごめんなさーい! 個人チャットの申し込み、来ちゃったー! 楽しいお話、ありがとうございましたー!』
そう言って、画面の向こうの女性は、笑顔を残して消えた。俺は大きく息を吐く。
「興味もないくせに、あれこれ聞くなよ! お互い時間の無駄だろうが!」
男女5人づつのオンライン合コン。あらかじめ簡単なプロフィールを交換した後、全員で自己紹介。後は、個々で会話を楽しむ。会話中に他の参加者からの申し込みがあっても、相手がOKなら3人以上で会話も出来るのに俺を切ったということは……まあ、そういうことだ。
『離島? 自然が多くて素敵ですね』
見えすいたお世辞は、耳の上を滑って行く。
『飲み会とか行けないですね』
今やってんのは、飲み会じゃねーのかよ!
『遠過ぎー! 会いたくなっても、すぐ会えないですねー』
オンラインですぐ会えるわ!
久しぶりの女性との会話に最初は心を躍らせていたけど、離島に住んで全てをオンラインで済ませていると話すと、大体こんな感じになる。
働き方や生活が変わっても、人の付き合い方は変わらないようだ。
女性達に言わせると、オンラインはあくまで出会いの場。オンラインで相手を値踏みし、良さそうなら実際に会う。俺のように、会うのも飲むのも旅行するのもオンラインで良いなんて女性は、いない。
そう、諦め始めていた時、彼女に会った。
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