第7話 学校祭にて②
「ところで、
素に戻った綾瀬さんは、堺の存在など何事もなかったかのように俺に話しかけて来た。
そういえばこの前、綾瀬さんと学祭の話をした時に話の流れで俺の交代時間を教えていたんだった。
「ええ、そうですね。あと10分くらいです」
「そうだよね!
「そうそう、
「私も
綾瀬さんは欲望をストレートに出してくるな。
小鳥遊さんも、その計算は店で発揮してほしい。
そして西野さん!
ちゃんと料理の部分を声に出して!
卑猥に聞こえるじゃないか!
そもそも、なぜに俺の料理を食わないと仕事が出来ない上に、死んでしまうんだよ・・・
と色々と言いたい事はあるのだが、とりあえず注文を受ける事にする。
「はあ・・・まあいいですけど、学祭なんで大したものはないですよ?で、何を食べたいんですか?」
「私はナポリタン!」
「じゃあ私、焼きそば!」
「それなら私は・・・和風パスタ!」
皆同じものかと思いきや、綾瀬さんに続き小鳥遊さん、西野さんと、ものの見事に別の物を注文してきた。
「・・・全員バラバラですか・・・さすがにそれを一人で全部やると時間かかるので、味付けなんかは僕がやりますが、それ以外はクラスメイトに少し手伝ってもらう事になりますよ?」
「うん、もちろんそれでいいよ!」
「
「ああ~、ようやく
いや、西野さん!
俺エキスって何!?
それだと、俺の何かが入っているように聞こえるんですが!
「いやあ、“花鳥風月”では料理はマスターが作ってくれるからねぇ。
「うん、そうだね。私は
「楽しみにしてくれるのは嬉しいですよ・・・って、西野さんも僕の料理はまだ食べた事ないですよね!?」
どうも、今日の西野さんはいつもと違っておかしい気がする。
こんなに冗談をぶっ込んで来る人だっただろうか?
「じゃ、じゃあ、とりあえず作ってきますから、少し待っててください・・・」
とりあえずあまり深く考えないようにして、俺は3人から代金として400円ずつを受け取り、厨房へ向かおうとした。
と、その前に・・・
「っていうか、小鳥遊さんは店の賄いを俺に作らせて食べてるんだから、何もここで俺が作った物を食わなくてもいいでしょうに・・・」
と一言残して俺は去っていく。
俺の言葉を聞いた瞬間、俺の背後からはよからぬ雰囲気を感じたが、きっと気のせいである。
その後に小鳥遊さんが、綾瀬さんと西野さんから雷を食らったとか食らわなかったとか・・・
3人の注文を作っている最中に、周りから彼女達の事など色々と聞かれたりもしたが、特に気にする事もなく適当に受け流しながら料理を作る。
そしてとりあえず、何とか同時に作り上げた料理を3人に持っていく。
飲食店のホール経験者なら、3皿同時に持っていくことくらいは朝飯前である。
俺が料理を持っていくと、3人は嬉しそうに笑顔を見せていた。
俺も何だかんだ言いながらも、その笑顔を見られた事が非常に嬉しい。
「じゃあ、そろそろ交代の時間になりそうなんで、自分の分を作ったらこちらに戻ってきます」
俺はそう告げると、再び厨房に戻っていく。
「うん、料理ありがとね。待ってるよ~」
「何度も言うけど、
「なるべく早く来てねぇ。あんまり遅いと、
うん、突っ込まない!
もう突っ込まないぞ!!
後ろから掛けられる声に、俺はなんとか突っ込みを我慢するのであった。
そして自分の分を作り上げると丁度交代時間となったため、自分の分を持って3人の居る所へ向かう。
「いや~、やっぱり
「ちょっと、翼さん!?違うでしょ!私に対する愛情込め込めに決まってるんだよ!」
「ああ~、
女3人寄ればかしましい・・・
いや、彼女達を否定しているわけではないが、さすがに全部構っていると疲れてしまうので、ある程度はスルーを決め込む事にする。
・・・って、流石に西野さんの言葉だけはスルー出来ない!
「ちょっと西野さん!僕が何かを入れたような言い方はやめて!!」
という俺の嘆きも空しく、西野さんは星ちゃんのエキスが、エキスが~と言いながら食べているのだった。
・・・・・・
なんだかんだで、もう3人はすでに殆ど平らげている為、俺も急いで食べないと。
「焦らなくてもいいんだよ?お姉さんは寛大だから遅くても怒らずに、ちゃんと食べ終わるの待ってるから」
綾瀬さんはそう言ってくれるが、彼女達がここに来た最初の一言目で、俺は遅いと怒られた気がするんだけど?
そう思いつつも、「わかりました」とだけ告げてそのまま食べ続けた。
「でも、
料理を食べている俺に向かって、綾瀬さんがそう呟く。
「ああ、確かにそうですね。僕はお三方と、外で会う機会がなかったですからね」
「それは
「いや、お客様を誘うとか出来るわけないでしょ。“花鳥風月”が好きで来てくれる
「いや、“花鳥風月”も好きだけどそれだけじゃないんだけどなぁ・・・それに不快になるわけがないんだけど・・・」
俺が“花鳥風月”のマイナスになる事をするわけがないと告げると、綾瀬さんはボソボソ何かを言っていたようだがよく聞こえない。
「・・・っていうか、
えっ?
綾瀬さんも小鳥遊さん同様、脳内変換するタイプですか?
俺はそんな事言ってませんけど・・・
「聞き捨てならないわね・・・それよりも・・・ねえ
俺と綾瀬さんの話を聞いていた小鳥遊さんが、そうブツブツ文句を言い出した。
「いや、それこそ大事な同僚に、俺なんかが誘うなんておこがましい事が出来るわけがありませんよ」
「ちょっ!大事な小鳥遊さんだなんて!さらに翼さんよりも大事だなんて!」
あっ・・・俺、余計な事を言った・・・
脳内変換お得意の小鳥遊さんに、大事なんて使うべきではなかった・・・
しかも小鳥遊さんがそう言った瞬間に、綾瀬さんと目から火花を散らし始めていた。
そんな2人をよそに、西野さんが口を開く。
「私は、
「西野さんは忙しそうですもんね。でも、こうして会う事が出来て僕も嬉しいですよ」
正直、どうしてこの3人が俺を引き合いに出すのか全く持ってわからないが、とりあえず西野さんにも会えて嬉しい事は間違いないので、素直にそう口にした。
「ああ~、
・・・西野さんも、2人とは違う方向性で脳内変換されるようだ。
3人とも綺麗で可愛いのに、なんでこんなに残念な部分があるのだろうか・・・
と思いつつも、食事の続きを取り始めるのであった。
とりあえず俺もなんとか食べ終り、食器だけ厨房に返してきて3人の元へと戻る。
「じゃあ、早速行こうか!」
「
「
西野さん!
それなんか違う意味に聞こえるからやめてっての!!
綾瀬さんと小鳥遊さんはともかく、久しぶりにあった西野さん・・・
本当にこんな感じだっただろうか・・・
と疑問に感じながらも、俺は3人と一緒に教室を出たのである。
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