第2話

見渡すばかりの可愛らしい雑貨類。

おしゃれなドライフラワーや写真立て、木で編んだかご、食器、バッグなど。

どれもこれも乙女の色が強く前面に押し出された物ばかりなのだ。

店の一角には魔女グッズのコーナーがあり、珍しい物が棚を占めていた。

水晶で出来たペンデュラム、魔法陣の描かれたバンダナ、それに魔法使いの杖やローブまで、本格的なものまであった。

鉄の鍋は物語に登場する、いかにもな「魔女」がぐつぐつと何かを煮込んでいる姿を想像させる。

他にも使い方すら想像の付かないようなものがたくさんディスプレイしてある。

依音は、そんな場所にいる自分がどうしても浮いているとしか思えず、居心地の悪さを覚えるのだった。

「あの~……」

「は、はい!いらっしゃいませ」

ぼんやり座っているところへ、女子中学生らしき女の子が声を掛けてきた。

お客さんかと思いきや、手には一通の手紙。

「これ!読んでください!」

「えっ?」

何が何やら分からないまま手渡されたその手紙を見つめているうちに、その女子中学生は走り去ってしまった。

店の外で待っていたらしき友達ときゃーきゃー言っているのが窓から見えた。

乙女らしさ満載の、ピンク色のレターセット。

見覚えがあると思ったら、この店で取り扱っているものではないか。

先ほどの中学生が数日前に買いに来ていたことを依音は思い出した。

封筒の口に貼られた花のシールをそっと剥がし、中身を取り出して広げてみた。

「うっ!」

そこに書かれていた内容を見て依音は絶句した。


『いきなりこんなお手紙すみません。

恥ずかしくて言えそうもないので手紙にしました。

ずっと前から好きでした。

前に、お釣りを落としてしまったときに拾って優しく手渡ししてもらったこと、覚えてますか?

その時に好きになってしまいました。

かっこいいお兄さん、大好きです。  りさ』


依音は手を震わせながら手紙を読み終えた。

この、「かっこいいお兄さん」というのは自分のことなのだろうか。

男性に間違えられることはしょっちゅうなので慣れっこと言えば慣れっこなのだが、ラブレターまで貰ったのは初めてだ。

ますます自分の容姿のことが恨めしく思えてくる。

そしてこの手紙をくれた女子にどうやって伝えたら良いのだろう。

「だから、店番は嫌なんだ!!」

自分は母親のように魔女になる気はさらさらない。

なのに、こんな店で店番などさせられるからこういう目に遭うのだ。

依音はむしゃくしゃしてカウンターに突っ伏した。


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