プロローグ 絶望の淵で
パチパチと耳に
幸せな笑い声、しんとした雪の
まもなく
外出用ではない柔らかな
小さな
けもの道ですらもないこの
(もう、
すっかり空っぽになってしまった
「
「ええ」
彼はいつも、アレクシアのことを『王女』と呼ぶ。
もう『王女』ではなくなってから一年と少しが
けれど今はそんな
終わりはもう見えている。それなのに、彼への
(私たちはじきに追っ手に
「……っつ」
「今、魔法で傷を治すわ!」
「だめだ。さっき、使用人たちを逃がすのに使ってもう魔力は空っぽだろう。これ以上無理をしたら命に
「無理をしなくても、もうとっくに関わってるわよ? いいから見せて!」
「……今それを言う場面か……」
(今なら、私を置いて行けと命令を下せるわ)
アレクシアは
「……行くぞ」
言葉を発するタイミングを
二人は、このプリエゼーダ王国を治める若き女王とその従騎士である。
城が
けれど、不思議と裏切りへの
さっき、アレクシアはこの世界でも有数の
自分と専属の従騎士であるクラウスだけが残り、こんな原始的な方法で逃げているのは、彼らへの追っ手を
(彼らのことは協約を結ぶ同盟国の国境まで飛ばした。だからきっと、国境を
その
「いたぞ! こっちだ!」
(クラウスは、私が守る)
もう魔法は使えないことなど、本能で分かっていた。
けれど、幼い頃から彼と
「……アレクシア」
アレクシアの
(どうして……この想いを一度も伝えなかったのかしら)
最後の感情は、国を守ることだけを考えて生きてきたアレクシアとしてはびっくりするほどの、少女のように
その後の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます