SUN KID 青い目の陰陽児
左近ピロタカ
赤色の月・金色の乙女
「月がとっても赤いから〜、近道しよーおか〜♪」
変なうたを唄いながら、小学五年生の
今夜は空気が生ぬるい。それに真っ赤な半月だ。(こんな春の夜は何か起きそう) 壱はそう感じていた……。
彼が住んでるこの土地、
「こんなことなら、氏子さんへお使いするんじゃなかったな」
「うーん。こりゃ久々に変なもの見えるかもなぁ」
とにかくすぐに帰りたかった。大通りの途中で抜け道へ入る。
町の人たちが〝
「あちゃ。失敗したかな?」
入ってすぐに自転車を止めた。何か予感が。
(こちらへどうぞ)と誘われているみたいだ。月明かりのせいか、通りの石畳が赤く染まって見える気もした。予感は高まる。
「ええと……。まあ月明かりもあるし大丈夫だろ」
かまわずに自転車をこぐ。でも油断大敵。壱は、見えちゃった。
自転車で走り続ける
「あれ? いつの間に人が……」
真っすぐに抜けるこの道は見通しがいい。向こう側から
「こ、こんばんわ」
すれ違いざま、
(ん? この人……ちがう?)
「見えるのか?」
「はいーー!!?」
町じゅうに聞こえそうな、すっとんきょうな裏声をあげる
歌手も拍手喝采だろう。
「聞こえるのか?」
思わず急ブレーキ。ふり返った
(なんかニョッキリ生えてるし!)
それも二本。
「鬼だ! ヤバい!」
あわてて自転車をこぎだす
ガッチャンと、イヤな音がした。
〝こんな時に限っちゃってあるある〟が発動。チェーンが外れたのだ。さらに〝悪いこと
は重なっちゃうあるある〟も続く。
勢いあまって自転車ごと派手に転がった。
「オレが見えるのか? オレの声が聞えるんだな? お前があのお方の敵か」
(なに言ってるか分かりません! 本当に!! ありがとうございまーす!!!!)
と、心の中でお礼を叫んでる場合じゃない。
「痛たたた……」
ひざから血が出ている。ひじも打ったようだ。
早く逃げなきゃいけない。でも思うように起き上がれない。
どんどん鬼が近づいて来る! 速い!
もう自転車なんかどうでもいい。後ろなんか見ているヒマなんて無い。ヨロヨロと、やっと立ち上がって
黒い影がひとつ立っていた。人の形をしている。でもそれも、急に現れた。
「また出た! アッあれ?」
黒い影の顔? のまわりが
(コワくない……。あれは、オーラ?)
ボヤ〜んと
「伏せなさい!」
「ハイッ!」
とっさに答える
(女の子……の声?)
声は迷いが無く、透き通っていて、力強く響いた。
「えっ。
横に五本、縦に四本の格子状の金の光が壱の頭上をすごい速さで通り過ぎる。鬼へと向かって。
〝
ちなみに、人に向かって使ってはいけない。良い子も悪い子もマネしちゃダメだぞ。
鬼は、
あっさりスッキリ————
「危なかったね」
「君、もう少しで連れて行かれるところだったのよ」
さっきとは打って変わって落ち着いた声だ。
「カワイイ声……」
「そう? ありがと」
月明かりでは暗すぎて女の子の表情はわからない。
でも少しだけ、はにかんでいるような感じがした。
「今夜は〝
「う、うん。ありがとう(
ドギマギオドオドしながらお礼を言う。
そしてふいに、壱は気づいた。
(もしかして、
〝
壱が入ってしまった方角が、ちょうど南西の〝
「じゃ、気をつけて帰ってね」
「
そう言葉を残して
ヘナヘナへな〜とオノマトペな音が聞こえそうなくらい、
「あの女の子も人じゃなかったんだ……」
「あ。おれも
「とにかくここから逃げなきゃ。またなんか来たらたまらん」
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