人類史上で最も世界的に有名になった幽霊の話
ツヨシ
第1話
事の始まりは、とある地方の小さな小学校で古い校舎が取り壊された事だ。
築六十年か七十年にもなる校舎で、ここ数年は全く使われていなかったものだ。
解体業者が入り、順調に壊されていた。
そしてもうすぐほとんど更地になろうかという時に、それは見つかった。
校舎の床下にあたる地面の一か所に、大量にお札のようなものが貼られていたのだ。
地面に直に。
痛みが激しくてお札のようなものとしかわからなかったが、業者にとっては困ったものであることには変わりがない。
これを勝手に取り除いてもいいものか。
悩んだ挙句に業者の責任者が校長に相談した。
校長はそれを見て少し考えた。
こんなものがこんなところにあるなんて全然聞いてない。
しかし取り除かずに校舎を全部解体してしまったら、これを子供たちが見ることになるだろう。
そうなるとちょっとした騒ぎになるのは間違いない。
そんな不要なことは避けたいと校長は考え、業者に取り除くようにと言い、業者はその通りにした。
かくてお札のようなものは取り除かれ、その後校舎は全て解体されたのである。
それからしばらく経ったある快晴の日のことだ。
最初に気づいたのは四年B組の一番後ろで窓際の席の女の子だった。
窓の外を女が歩いていたのだ。
その女は窓の外、教室の後ろから前に向かってひどくゆっくりと歩いていた。
女の子が声を上げ、教室の生徒たちが次々と女に気がついた。
真っ赤なワンピースを着た長い黒髪の女性。
その顔は無表情な上に不自然なほどに白く、生気というものがまるでなかった。
もちろん先生も気づく。
多くが驚きふためき、教室から飛び出す者も少なくなかった。
騒ぎを聞いて、両隣の教室から先生が二人駆けつけてきた。
そして見た。
ここは三階で、窓の外にはベランダなどもなく、人が歩くことなど不可能だ。
そのころにはほとんどの生徒が教室を飛び出していた。
女はゆっくりと歩き続け、そのまま教室の一番前の窓を横切り、見えなくなった。
三人の先生はあっけにとられていたが、やがて先生としての責務を思い出した。
教室に座り込んで泣いている生徒をなだめ、外に出て行った生徒をもう大丈夫と教室に戻した。
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