第122話

「僕の目的は、この街を冬流組の縄張りにすること。それにはね、君の助けが必要なんだよ、浜中大志君?」



「あいにく、そんなことに手を貸すほぼバカじゃねぇんだよ、俺は」



そう言い、俺はヒョロ男に殴りかかった。



拳は簡単に男の顔面に命中し、男は椅子があった場所まで吹っ飛んだ。



それを合図にしたように、メンバーたちが怒号をあげながら、スーツ男に掴みかかる。



当然、相手は武器を持っていてポケットからナイフを取り出した。



けれど、俺のメンバーたちはうまくナイフをかわし、隙を見つけて急所へ蹴りを入れる。



本当に、よくできたやつらだ。



そう関心しながら、俺は仰向けに倒れているヒョロ男の前へと歩いて行った。



男は目を閉じていたが、きっと演技だ。



俺の大切な女を傷つけておいて、さっさと気絶させられたんじゃ面白くない。



だから、わざと手加減しているのだ。



「おい、起きろよ」



そう言い、相手の腹を踏みつけた。



「うっ!」



と、男は小さくうめき声をあげて目をあけた。



その瞬間。



ヒョロ男はポケットから小型の拳銃を取り出し、俺に向けてかまえた。



やっぱり持ってたか。



小型の銃といえど、威力は十分にあるはずだ。



命中すれば、死ぬ。



でも俺は千沙と約束したんだ。



必ず戻ると。


「どうした? さすがの浜中大志でも拳銃には勝てないか? ひゃははっ」


なんだよ、その愉快な笑い方は。



まるで漫画みたいで、こっちも笑えてくる。



俺はフッと頬を緩めた。



次の瞬間ヒョロ男は立ち上がり、俺めがけて引き金引いた……。




バァン!!




耳をつんざく音。



一瞬にして静まり返る室内。



倒れていく瞬間、メンバーたちは黒スーツの男を全員倒したのが見えた。



お前ら、よくやったな。



後は俺がこのふざけた笑い声の野郎を倒せば終わりだ。



ドッと背中から倒れ込む。



「大志!!!」



アツシやキョウの声が聞こえる。



俺の視界が暗くなる。



そして……。



「ひゃははっ! 不良のリーダーも大したことないねぇ」



という声がすぐ近くで聞こえた瞬間、俺はパッと目をあけた。



驚いてひるんでいるヒョロ男の顔が目の前にある。



今度は容赦しねぇ。



俺はヒョロ男の顔面に強烈な一発を食らわせた。



男は鼻血を吹き、その場に仰向けになって失神してしまった。



「ふん。たいしたことねぇのはテメェだろうが」



そう呟き、情けない気絶顔に向けて唾を吐く。

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