第108話
☆☆☆
~大志side~
カナタから衝撃的な事実を聞いた俺は、すぐに集会の準備にとりかかっていた。
カナタの話が本当ならば、赤旗が力を増していったのは赤旗の仕業ではないかもしれない。
もっと、複雑な事情が絡んでいるかもしれない。
考えてみれば、当然だ。
西区と東区と3つのグルームが合併して、ようやく赤旗の半分くらいのチームだ。
その倍の人間を集めて仕切るなんて、一般のヤンキーには難しいことだ。
だとしたら、結論は1つ。
赤旗のバックには、組がついている……。
しかも、赤旗の意思と関係なく動き回っている。
だから赤旗は舵を失い、汚名だけを着せられている状態かもしれないのだ。
下手をすれば、組の起こした事件のしっぽ切りに利用されているかもしれない。
ギリギリと歯を食いしばった時、部屋のドアがノックされた。
「誰だ!?」
イライラしながら返事をすると、「大志? あたしだけど」と、千沙の声が聞こえてきた。
俺は慌てて部屋のドアを開ける。
すると、そこには千沙と福元。
それに、あつ2人の女が立っていた。
力耶と強の大切な女たちだ。
「どうした?」
「強から、連絡いった?」
「あぁ、あった」
うなづくと、千沙は上目づかいで俺を見てきた。
「そのことでね、あたしたち調べたの」
「調べた?」
首をかしげると、千沙がバックから紙を数枚取り出した。
どうやら、ネット上の情報を印刷したものらしい。
「これ、昔北区で行われていた街をあげてのデモ行動なんだけど……」
「デモ?」
俺は紙を受け取り、文字を目で追う。
そこには【恋愛に自由を! 若者たちの悲鳴!】と、大きな見出しで書かれていて、同性愛や出身地による差別を反対しているようだった。
俺はそれを見て、カナタの言葉を思い出す。
《俺たち、元々暴走族とかじゃないんです。恋愛の自由を求める集まりで、みんな同性愛とか、年齢とかで誰かを好きになることを諦めてきた連中なんです》
「ここ、見て」
千沙が、記事に載っているデモ参加者の名前を指差した。
【若者の中でリーダーシップをはなっているのは赤旗夏夢さん】
「赤旗……」
「ね、やっぱり赤旗の弱点は女だよ。でも……こんな人がどうして卑怯な事をするようになったのかしら?」
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