第98話

「気にするな。俺も、隠し事ばかりで悪かったと思ってる」



「大志……」



また、心臓がドキドキする。



これが、好きってことなんだよね?



会えなかった分、伝えたい気持ちが膨らんでいる。



「ねぇ、大志……」



「どうした? 顔、赤いぞ?」



「あ、あの。あのね、あたしね……」



『好き』と、言いたいだけなのに、その2文字はなかなか出てこない。



モゴモゴと口を動かしている間に、ホームルームの開始を知らせるチャイムが校内に鳴り始めた。



「千沙?」



大志が、心配そうにしている。



「な、なんでもない」



あたしはそう言い、ニコッと笑った。



勢いで告白してしまいそうになったけれど、今は恋羽も一緒にいるんだった。



あたしは慌てて恋羽の手を握ると、「大志も行かなきゃ遅刻するよ?」と言って、その場を離れたのだった。

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