第95話

~大志side~


退院した翌日。



俺はすぐに集会を手配をしていた。



力耶に聞くと、今日は夕方以降からライブハウスが空いているらしいので、その時間に集合するようにメールで一斉送信した。



一階のリビングへ下りていくと、珍しく母親がまだ家にいた。



もう、パートの出勤時間は過ぎているから、休みかもしれない。



「今日は学校どうするの?」



そう聞かれたので、俺は冷蔵庫からウーロン茶を取り出しながら「どっちでも?」と、答えた。



「千沙ちゃん、心配してたわよ?」



千沙……。



ウーロン茶をそそいでいた動きが、一瞬止まる。



その拍子に、コップからあふれたウーロン茶がテーブルを濡らした。



「もう、あんたなにボーっとしてんのよ」



「なぁ。千沙、何か言ってたか?」



「最近会ってないけど、責任感じてるみたいだって、勇士は言ってたよ?」



母親、がテーブルをふきながらそう言った。



学校に行けば千沙に会える。



集会もあるし、めんどうだから休もうと思っていたけれど……。



「学校、行こうかな」



俺は、そう呟いた。



☆☆☆


久しぶりに登校した学校に懐かしさを感じて、俺は自分のことがおかしくなった。



まともに授業なんて出てないのに、懐かしいと感じるなんて変だろ。



行きかう生徒の中に千沙の姿を探す。



まだ、来てないか……。



強の親に送り迎えしてもらっているハズだから、心配はない。



俺はそのまま3階の空き教室へと向かった。



すでに何人か集まっているのか、空き教室の中から話声が聞こえてきた。



「よぉ」



そう言いながらドアを開けると、一瞬教室の中がシンとする。



そして、ハッとしたようにアツシが立ちあがった。



「大志!!」



「久しぶりだなアツシ」



それを合図にしたように、たまっていた5・6人のメンバーたちが集まってきた。



やっぱり、俺の場所はここだな。



そう、再確認させられる。



一通りみんなと他愛のない会話をして、窓際に椅子を置いて座る。



この窓からは校庭が見えて、授業前の朝連を終えた部活の練習が汗を拭いているのが目に入った。



こんな朝っぱらからごくろうなことだ。



そう思って見ていると、部活の連中に混ざって千沙と福元が歩いているのに気がついた。



手にはバトミントンのラケットを持っている。



遊んでいたのか。



はしゃぎながら歩いて行く千沙の姿に、俺は思わず頬がゆるんだ。

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